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孤独な彼との数ヶ月 1

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そして、数日後、兄が通った道を、弟が進む。兄の亡骸を取り戻すために。
銃声を響かせながら、決意を胸に秘めて。
兄の体に刃を突き立てた者たちに、同じ絶望を。そう願わずにいられない。呪わずには、いられない。
鳴り響く銃声は、葬送の鐘だった。
神に愛されぬ魂を送るのに、本物の鐘は鳴らぬ。神はえこひいきをするのだ。
あんなにやさしい人をつまはじきにする神などいらぬ。
だから、僕も神を見限る。
もう、神の手助けなどしない。
(騒がしい葬送の鐘で、ごめんね、兄さん)
銃声を響かせながら謝る言葉は胸の内。
そして、ようやく見つけた兄の亡骸の前に、僕は立ち尽くす。
声を抑えられない。絶望の叫びをあげる。

ああ、兄さん!

あなたは、なんという過ちを犯したのか。
僕を永遠にひとりにした。
どうやって、生きていけというのだろう?こんな世界で。
もう、どこにも居場所がないのだ。
もとより、あなたのそばだけが居場所だったのだ。あなた亡き今、僕は、世界中のどこにも、いられない。僕が悪魔を、それも魔神の炎を継いだ者を愛した異端であると、僕はもちろん自覚し、周囲の人々も薄々気づいている。
だから、僕は、あなたの死をきっかけに悪魔落ちした。
『お前のこと考えたら、もっと、べつのせんたくしってやつが、あったのかもなあ』
あなたは、そう書いていた。それに僕に問うたでしょう?
たのしかったか、と。
前からあった選択肢なんだ。これが、僕の出した遅すぎる結論。
この選択肢を今まで選びあぐねていた僕の罪。ああ、あなたに罪などあろうはずもない。
あなたといて幸せだった。これ以上ないくらいに。
だから、その幸せが、いつか砂の城みたいに脆く儚く崩れる可能性を僕は誰より恐れていた。
あなたがこの手からすり抜けて、永久にとどかぬところへ逝ってしまう前に、もっとはやくにこうすれば良かった!
後悔も悲しみも飲み込もうとすると、喉の奥につかえるんだ。
まるで棘があるみたいに、喉もとに詰まって、僕を苛む。

ああ、兄さん

僕は、祈るように呟いた。
「もう苦しまなくていいんだね……少なくともあなただけは……」
そして、僕はこれから苦しむのだ。
兄の亡骸を肩に担いで、愛銃を持つ手を片手だけにしてトリガーをひく。
あなたの後を僕は追わない。ひとまずは。
死んであなたに会える保証もないのだから。今は耐えられるギリギリの境界。
しておきたいことがほんの少しだけ。
悪魔落ちした僕は、あなたの亡骸を使って、少ししようと思っていることがあるんだ。
簡単なこと。そして、それは、僕の罪をひとつ増やす。
できれば僕は、このひとでなしどもに少しばかりきつい報復をしておきたい。あなたのもとへ行く前に。あなたの遺体を使って作る生き人形とともに。
僕は、あなたの弔いを続けて、無為な生をいきる。
ここは地獄だ。
あなたのいない無限地獄。
救いの手なんて期待していないけど、兄さん、あなたにはあるといい。
どこかで見ているなら、ねえ、誉めてよ。
たくさん、殺すから。



神さまがいくら生みだしても、追いつかないくらいに!