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楽しいクッキング

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立春がすぎたというのに、寒さが残り、雪もちらつく日本。
雪の寒さとは程遠いほど、本田菊宅へと向かう人たちの足取りは春めいていた。

家の主、菊はコタツに入り、愛犬のポチくんとのんびりしていた。
膝の上のポチくんを撫でつつ、柱時計を見る。
「皆さん、遅いですねぇ。」
誰に言うわけでもなくポツリと呟く。

---ピンポーン
不意に玄関の呼び鈴が鳴る。
菊はポチくんを膝から下ろすと慌てて玄関へと向かった。

玄関先に見える黒い人影。
それが誰だか確認した菊は玄関のガラス戸を開ける。
ガラス戸を開けるカララという音のその先にいたのは菊にとって大切な友人たちだった。
「菊〜、皆と合流して来たであります」
そうにこやかに敬礼をしつつ、菊を見る男。
「いらっしゃい、皆さん。お待ちしていましたよ。さぁ、中にどうぞ。」
そう言って来客を室内へ促す。
「はぁい、お邪魔するであります」
そう言って上がりこむ男。
「あ、フェリシアーノくん、先ほどの敬礼、逆でしたよ。」
菊は上がりこんでいるフェリシアーノ・ヴァルガスに向かって微笑んだ。
「ヴェ〜、ルートがいたら怒られてるところだったねぇ」
そう言ってフェリシアーノは笑い、菊に軽いハグをすると居間へと向かった。
菊はハグされた事に少し驚いたが、何時ものことなので、昔された時とは違い気にはならなかった。
「あ、これ、トーニョんとこで取れたトマトだ。トーニョがどうしても持っていけっていうから、持ってきたぞ。」
そっぽを向きつつ籠いっぱいに入ったトマトを差し出す男。
「ありがとうございます、ロヴィーノくん。後でアントーニョさんにお礼言わなくては。」
菊がそういってる間に、ロヴィーノ・ヴァルガスは居間へと向かっていた。
「菊さん、これ今年取れたばかりのメープルなんですけど、よかったら。」
はにかむ笑顔でメープルを差し出す男。
「ああ、ありがとうございます、マシューさん。ささ、居間に行っててくださいね?」
メープルを受け取り、ほころび笑顔でマシュー・ウィリアムズにそういうと、マシューはコクリと頷いてそのまま居間に向かった。
「よ、よう。フェリシアーノがどうしてもっていうから来てやったぜ」
少し照れたようにそっぽを向きつついう男。
「ありがとうございます、お待ちしてましたよ、アーサーさん。」
そういいつつ笑う菊を横目で見ながら、アーサー・カークランドは小さな紙袋を差し出した。
「上質な紅茶が手に入ったからおすそ分けだ。べ、別に皆で飲めるからだとは思って持ってきてないんだからな。」
アーサーはそういうと、ロヴィーノに渡された籠を持ったままの菊から、その籠を奪い取るように取り上げ、代わりに紙袋を持たせた。
「キッチンに置いといてやるよ。」
そういいながら、すでに背後にいる形となった菊に振り向きもせずそういうと、居間へ向かった。
それを笑いながら見送った菊は、玄関先の靴を揃え、皆が待つ居間へと向かう。

台所へ頂いたものを置きに行き、其の足で居間に行くと既に皆はコタツに入り込んでいた。
それを含み笑いで見ながら懐から紐を取り出し、着物の袖が汚れないよう、紐で括った。
「さぁ、皆さん、始めますよ。チョコ作り。」
そう言うと菊は皆に向かって微笑む。
それを聞いた4人は各々立ち上がり、腕まくりを始めた。


この事の発端はフェリシアーノが言い始めた事だった。
たまたまアーサーの恋人のアルフレッド・ジョーンズとフランシス・ボヌフォワが会議で言ってた『なんで毎回作ってるのに、アーサーはスコーンとかうまくならないだ』という事を聞いたことから始まったのだ。
それを聞いたフェリシアーノが、アーサーと菊を捕まえて、ものすごい笑顔を二人に向けた。
『ねぇ、アーサー、アルフレッドの事見返してあげようよ。一緒に作ってあげるから、なんか作って驚かそうよ』
そう言い出した事の発端。
それに菊も賛同し、アーサーもしぶしぶフェリシアーノに説得されて何か作ろうという話になった。
それをたまたま聞いていた、マシューと半分無理やりフェリシアーノに引きずり込まれたロヴィーノも参加することになったのだ。


「さてと、材料はそろえました。ティラミス風トリュフ作りましょうか。」
そう言いつつ、菊は材料をテーブルに並べる。
それを4人はじっと見つめる。
「えっとまず、クリームチーズ 、チョコレート、コーティング用チョコレート、インスタントコーヒー、無糖ココアパウダーが材料になりますね。」
そう言って菊は一つ一つ教えていく。
それを見ていたフェリシアーノは何処か楽しげだ。
他の3人はそれをじっと真剣に見ている。
「クリームチーズは室温に戻してありますから、チョコレートを溶かしましょうか。」
菊がチョコレートを各々に差し出すと、チョコレートを刻み始めた。
「ちょ・・・ちょっと、兄ちゃん、手危ないよぉ!
 手気をつけてよぉ」
チョコレートを刻みつつ、余所見をしていたロヴィーノは手を切りかけた。
「ちぎーー、そんなの分かってるぞ、コノヤロー。」
ポコポコ怒りながら、その怒りをチョコレートに向けつつ刻むロヴィーノ。
「はっ、そんなこともできねぇのか。だらしねぇなぁ」
アーサーは蔑んだ笑い方をしつつ、怒られていたロヴィーノを見る。
「あ、アーサーも手気をつけてねぇ。」
フェリシアーノにそう言われ、アーサーは罰が悪そうな顔をする。
それを聞いていたロヴィーノは肩を震わせて笑った。
「あ゛あ゛?なんだよ、ロヴィーノ。」
笑っているのを見て、アーサーはロヴィーノに突っかかる。
「いえ、何でもありません、アーサー様。」
そっぽ向きつつ、そう言うと、アーサーへの怒りを更にチョコレートに向け刻み付けた。
「もぉ、二人とも喧嘩しないでよぉ、ヴェー・・・。」
今にも泣きそうな顔をして、二人を宥めるフェリシアーノ。
それでも手を緩めないのは流石と言った所か。
「あの・・・、終わりました、けど。」
遠慮がちに一人モクモクとチョコレートを刻んでいたマシューが菊とフェリシアーノに言う。
「ヴェー、マシュー、早いねぇ。」
フェリシアーノはそういうと、既に刻み終わっていた自分のチョコレートと包丁を置いて、マシューに抱きついた。
「流石、マシューさんです。二人も見習ったらどうですか?」
菊はマシューの頭を撫でてあげながら、喧嘩していた二人ににっこり笑ってそう言う。
八つ橋どうした菊、と2人が思ったのは言うまでもなく。
「二人とも、終わったら次は湯煎ですからね。」
そう言うと菊はお湯の入ったボールを5つ並べた。
各々刻んだチョコを空のボールに入れ、湯煎を始めた。
アーサーとロヴィーノは刻んだチョコレートを見ると、チョコレートの入ったボールを持ったまま、ガスコンロへ向かう。
そして、二人ともコンロの火をつけ、まったく同じ動作をし始めた。
其の異変に気づいたのは菊だった。
無言で菊は二人の肩をつかむと、チョコレートの入ったボールを取り上げ、お湯の入ったボールにそのボールを重ねた。
それをきょとんとして見るアーサーと、あからさまに不機嫌になっているロヴィーノ。
「なんだよ、チョコレート溶かすって、火に掛けるもんじゃねぇのかよ?」
小首をかしげながらアーサーが問う。
作品名:楽しいクッキング 作家名:狐崎 樹音