二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

むかしのやくそく

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 






ドイツ視点


ぼろぼろに泣いて疲れ、眠ってしまったイタリアをベッドへと運んだ。
こいつの泣く様を見るのは初めてではないが、今日のような泣き方を見たのは初めてだった。

(約束、とか言っていたな…)

恐らくは、その約束というのが原因なのだろう。
自分でも詳しく覚えていないというが、一体どれほど前に交わしたものなのだろう。
俺には、想像もつかない話だ。

「…ぅ……っ」

眠りながらも、時折くすんと鼻を鳴らして泣いている。
本当なら眠りを邪魔しないよう立ち去るべきだろうが、心配で離れられない。

「ったく…本当に仕方のない……」

ベッドの端へと腰掛け、イタリアの頭をそっと撫でた。
起きる気配はないが、何かを感じているのか、こちらへと身体を寄せてくる。
小さく身体を丸め眠る様子は、まるで子供みたいだと思った。

(……え?)

気のせい、だろうか。
今、一瞬だが、イタリアが本当に小さな子供のように見えた。
まるで、幼い頃のコイツを見たような、そんな奇妙な感覚。

(俺も、調子が悪いのだろうか…)

そういえば、イタリアの作った菓子を一つ食べた時も、よく分からない不思議な気持ちになった。
あの時は咄嗟に誤魔化したが、何故「ありがとう」などと言ったのか、自分でも分かっていない。
ただ、例えるなら、自分でない誰かが発したような…そんな感覚だった。

「イ、タ…リア……」


『ただいま』

『待っていてくれて、ありがとう』


ああ、何が起こっているんだ。分からない。
今、俺は何と言った?いや、俺が言った言葉なのか?
それすら分からない。
胸が酷く痛い。よく分からない感情が渦巻いていて、整理が出来ない。

「あっ……」

涙が、勝手に溢れ出して止まらなかった。
整理できない感情たちが、涙で流れていく。
涙が出る原因も、この感情も、分からないことだらけだ。
だが、異常が起こったのではないということは、不思議と理解できた。

(くそっ…!)

何だかよく分からんが、今はこの涙を止める術がない。
せめて、イタリアが起きてくるまでには止まってくれることを、今は願うだけだ。
作品名:むかしのやくそく 作家名:いちと