新 三匹の子豚Ⅰ
彼は以前にブーとフーの家を壊した罪で刑務所に入れられていたのですが、少し前に釈放されたとの噂でした。そして、誰にも出会わないように、村はずれに自分で家を建てて暮らしているようでした。
その狼が三匹の子豚たちに言いました。
「おやおや、せっかく頑張って建てたのに、こりゃまた全滅だね」
狼はそう言うと苦笑いを浮かべています。それに対して三匹は何も言えませんでした。
「今回の地震は本当に酷かったね。でも俺の家は大丈夫だったんだよ」
狼が自慢げに言いました。
「えっ? 嘘だろう?」と、ブーが言いました。
「そうだよ! あんな凄い地震にあって壊れない家なんてあるわけないよ」
フーも言いました。
「でも、それが本当なら凄いよ!」
ウーが目を丸くして言いました。
「ふっ。嘘なんかじゃないさ。見れば分かることだよ」
狼は少し胸を反らして言いました。
「実はね、俺は刑務所にいる時に、建築基準法や耐震強度について勉強してきたんだ。まさかこんなにすぐに役に立つとは思わなかったけどね」
「へえぇー」三匹が感心したように狼を見つめました。
「だから言うわけじゃないけど、もし良かったら次の家を建てるのを手伝ってあげてもいいよ。以前のお詫びに……」
「えっ、本当かい?」
ブーの目は怪しんでいるようでした。
「そうだなあ〜」
フーも少し迷っているようです。
「もし本当にそうしてくれるなら、助かります」
ウーは嬉しそうに言って、狼に右手を差し出しました。
ブーとフーが驚いてその様子を見ていると、狼は差し出されたウーの手をぎゅっと握り、二人はしっかりと握手を交わしたのでした。
それを見たブーとフーも、
「疑ってごめんよ。これからは仲良くしよう」
そう言って、ウーに続いて狼と握手をしました。
「よしっ、任せろ! アハハハ」
狼は嬉しそうに笑いました。
大地震がきっかけで、子豚たちと狼は仲直りしましたとさ。
おしまい
あとがき
さて今回は、いつもは悪役ばかりの狼にも、少しだけ善人役をさせてみましたがどうだったかな?