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【夏コミサンプル】Fragment【臨帝】

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 ルールは簡単。学校では他人の振りをすること。今後仲良くなる機会があったとしても、すれ違えば挨拶を交わす程度、顔見知り以上友人未満の関係を三年間貫き通すこと。ただし、学校が終われば今までのように遊ぶ。時間が合えば、毎日放課後は一緒に過ごすこと。
本当は仲がいいけど、周囲の人間すべてを偽って無関心を装う。そんなことするのに何の意味があるのか、とも思った。だが、今までとは違う生活、簡易的な二重生活をしていくと考えると興味を引かれ、帝人は臨也の提案を受け入れた。
そして学校では『折原君』『竜ヶ峰君』、放課後には『臨也』『帝人』としての関係が始まった。




【「放課後まで待てない」以下本編に続く】


<改ページ>


 目を覚ますと目の前に猫がいた。
最初に断わっておくと、俺は猫を飼っていないし、第一ここは俺の家じゃなくて帝人君の家だ。今にも崩れそうなボロアパートに住む彼に猫を買う余裕があるとは思えない。数時間前……帝人君と一緒にいた時にはこんな猫いなかったし、部屋の何処かに隠しているという気配もなかった。つまり、今俺を見下ろしている猫は全く  もって謎の不法侵入猫である、という結論に達した。
「どけ、猫」
 畳の上に倒れていた身体を起こす。今にも顔がぶつかりそうだった猫は、俺が手で軽く追い払うと慌てて部屋の隅まで走っていく。
 軽く息を吐いてから部屋を見渡すと、やはり帝人君はいなかった。どこかに出掛けたのかと思ったが、彼の携帯は机の上に置きっぱなしになっていたし、狭い玄関には見慣れた彼の靴がある。
「どこ行ったんだ……帝人君」
 携帯で時間を確認すると、まだ夕方。今日はお昼過ぎに帝人君の家を訪れ、何処か出掛けようと誘いに来たのに、生憎課題があるから無理だと断られた。仕方ないから夕飯だけでも一緒に、と思い彼が勉学に励む姿を眺めながらごろごろと寛いでいた。どうやら寛ぎ過ぎて眠ってしまったらしい。
 喉が渇きを訴えるので台所に移動し、流し台の下の棚に入れておいたミネラルウォーターを取り出す。ペットボトルのふたを開け、口をつければ生ぬるい水が渇きを満たしていく。だが、やっぱり冷たい水の方が爽快感は格段に違うだろう。今度冷蔵庫を買ってあげようか、でも電気代云々で断ってきそうだな、なんてとりとめもないことを考える。するとにゃー、と鳴き声がした。
 さっきまでと同じく、部屋の隅っこにちょこんと座り、猫は俺を見てもう一度鳴いた。一体こいつは何処から来たのか。首輪はつけられていないが汚ならしい様子はなく、毛並みも程々にツヤツヤしているように見える。まだ子供なのか街中で見かける猫より体は小さい。未だ逸らされることなく、じっと自分を見つめる瞳はサファイアのように綺麗な蒼だった。
 猫は好きじゃない……でも嫌いでもない。所詮論理的思考を持ち合わせていない動物。愛する人間程見ていても面白くない。本来なら無視するが、ただ一人で待っているのもつまらない。というわけで勝手知ったる他人の家。台所の棚を漁ってみたが、猫の餌になりそうなものどころか食料が殆どなかったので、棚から浅めの皿を借り、ペットボトルに残っている水を入れ、自分から少し離れた床に置いた。
「猫、おいで」
 数分前に追い払った時よりも、なるべく優しい声色で呼んでみる。猫にその違いが理解できるのか知らないが、俺の声に猫はピクリと耳を揺らし、水の入った皿と俺とを何度も見比べる。そして恐る恐る、足音もなく皿の側まで来た猫は、もう一度俺を見てからそっと顔を近付け、皿の中の水を飲んだ。ピチャピチャと音を立て夢中で飲んでいるから、どうやら猫も喉が渇いていたらしい。
水を飲み続ける猫を見ているだけなのもつまらなくて、しゃがみ込み、滑らかなラインを形成している背中を そっと撫でてみる。一瞬、猫はビクリと身体を揺らしたが、撫でるのをやめず手を動かし続けていると、気持ちいいのか長い尻尾が左右にゆっくり揺らした。
 水も飲み終わり、ただ撫でられるだけになっていた猫の身体を、思い切って両手で持ち上げてみた。流石に驚いたのかバタバタと身体を動かし抵抗したが、直ぐに観念して身体の力を抜き、だらんと俺の両手に全体重を預け、また俺をじっと見た。
 怖がっているくせに自分から近付いてきた。向けられる好意を感じ取っているのか、俺の手を気持ち良さそうに受け入れるその姿が、なんだか。

「なんだか、帝人君みたいだ」

 もしかしたら、俺が寝ている間に帝人君は、部屋に迷い込んできた自分に良く似たこの猫に親近感を持ち、餌を買いに行ったのかもしれない。あくまで憶測だが。
「俺と一緒にご主人が来るまで待つか」
 そう呟いて、猫を抱えたまま部屋の中心へと移動し、潰さないよう気を付けながら再び畳の上にごろりと寝転んだ。とりあえず猫は自分の腹の上に置く。あまり重さを感じない猫を落ち着かせるように撫でていれば、何度か身体を動かした後、身体を丸め静かになった。
 残された者同士、帝人君が帰ってくるまでのんびり寝るのもいい。そう思いながら、猫に続いて臨也も安らぎを得るべく、瞳を閉じ眠りに入った。



【「ブルーアイズ レッドアイズ ブラックキャット」以下本編に続く】