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玉木 たまえ
玉木 たまえ
novelistID. 21386
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トロメロ

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 その日は、昼休みに、秋丸を呼び出して屋上で昼食を取っていた。普段は、クラスの違う秋丸とわざわざひっついて食事をすることはあまりない。だから、榛名が呼んだ時点で秋丸は首をかしげていたのだった。
「あのよー」
 弁当を一つ平らげて、追加のパンを袋に手をかけたところで、ようやく榛名は切り出した。
「オレ、告られたっ」
 秋丸は箸を一度止めて、ふーん、と鼻を鳴らしたが、すぐに食事に戻っていった。
「それだけかよ!」
「や、だって別に珍しくねーじゃん。お前が告られんの」
「そーだけど、そーじゃねーの!」
 弁当箱から顔を上げて、榛名を見た秋丸は、驚いて、わあと気の抜けた声をあげた。榛名の顔が、すっかり赤くなっていたからだ。
「そういえば、俺に報告すんのは珍しーね。なに、お前の好きな子だったん?」
「す……!」
 さらりと投げ出された秋丸の言葉に、ますます体温が上がっていくのを感じて、榛名はごしごしと顔をこする。
「え? 違うの?」
「すき……っていうか! なんか、一緒にいると気持ちーなって、思ってたけど! したらあいつがなんか、オレんこと好きって言ってくるから、言われたらオレもそうかもしんねーって」
 榛名は、その時の相手の声や表情を思い出して、また熱を上げた。言われるまで、自分は気持ちの名前など、考えたことがなかった。けれども、「好き」と名前を与えられた途端、それはむくむくと育って、榛名の中をいっぱいにしていった。
「両思いなんじゃん。良かったなー。付き合うん?」
「あ!? あー、そういえば、返事聞いてねーな」
「聞けよ。そこ大事だろ」
「や、キスはしたけど、嫌がんなかったし」
「はああ??」
 秋丸は大げさに驚いてみせた。
「お前、手、早えんだなあ」
 そうなのだろうか、と榛名は首をひねった。だって、気がついたらキスをしていたのだから、仕方ないと思う。阿部が自分のことを好きで、自分もまた、阿部のことを好きなのだと自覚したら、ひとりでに体が動いていたのだ。
 そう説明すると、秋丸は、食べ終えた弁当箱を片づけながら言った。
「動物~」
「るせーよ。お前も、コイビトが出来たら分かる」
「うわっ、上から目線」
 言いながら、秋丸は立ち上がってズボンの後ろをパンパンと叩いて払った。それに習って、榛名も腰を上げる。
 屋上からの階段を降りながら、秋丸はなんだかしみじみとした口調で、大人の階段登っちゃうんだねえ、と榛名を見て呟いた。


 結論から言うと、榛名と阿部は、結構な早さで大人の階段を登りきってしまった。誰かと、自分の好意が重なり合う、目のくらむような感覚に、二人して思いきり酔っぱらっているのだ。
 阿部は、恋人になってからも、どこか鈍くて、生意気で、やることは大ざっぱで、榛名の気持ちとは関わりなく、阿部のままだった。その阿部が阿部である、という部分に触れるたび、榛名はたまらなくなってしまう。場所がどこでも、ぎゅっと力一杯抱きしめたくなる。
 タカヤっぽいタカヤが、オレんことを好き。
 そう思うと、もう阿部のことが可愛くて仕方がない。
 榛名は、ベッドに潜り込んで、眠りに落ちるまでの間、どうやって阿部と、24日に会う約束を取り付けようかと考えていた。


 翌日、お昼頃になって、ようやく阿部からの返信メールが届いた。

「件名:RE:いーだろ
 本文:オレは、アイちゃんひとすじなんで」

 短い文章と、一つの添付ファイル。開いて見ると、茶色の犬を抱きしめて満面の笑みを浮かべる阿部の姿が映っていた。
 榛名は、携帯電話を握りしめたまま、思わず机に突っ伏した。
 負けず嫌いで意地っぱりな阿部の、仕返しのようなメールは、確かに榛名の心臓を撃ち抜いたのだ。
 ――なあ、オレ結構、だめんなってる。お前に溶かされて、ぐにゃぐにゃ。
 ――タカヤ、お前はどーよ?
 しばらく、机の上で衝動と戦っていた榛名だったが、やがてむくりと起きあがって、返信をするべく、メール画面を開いた。
 今度は、榛名が「ずるい」とメールを送る番だった。オレにもその顔を見せろと、犬にばかりそんな笑顔を向けるのはずるいと訴える権利が、恋人にはあるのだった。
作品名:トロメロ 作家名:玉木 たまえ