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玉木 たまえ
玉木 たまえ
novelistID. 21386
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曜日男・他

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 タカヤなんてちっとも可愛くない。
 生意気ばかり言うし、素直じゃないし、顔は無愛想だし、全然よくない。今日も、あんまりムカつくことばっかり言うから、俺は怒った。
「あーもー、タカヤのばーか!」
 お前のそういうとこすっげー嫌い! って、そう言った。
 それで少しは傷ついた顔でもすれば、俺だって、そんなの嘘だって、言ってやってもいいのに、タカヤはへーってどうでも良さそうに返事するだけで、俺の方を見もしない。
 なんだこいつ。絶対、足りない。何が足りないって、愛とか、そういうの。これは別れるしかないって思った。っていうか十日にいっぺんくらいは別れようって思う。
 だってタカヤといても苛々したりドキドキしたりムラムラしたりするばかりで、俺はいつも困るのだから、全然いいことがない。あと五秒待ってもタカヤが何も言わなかったら、別れるって言ってやる、ってそう思ったところで、タカヤが口を開いた。
「元希さんに嫌われるのには慣れてますから」
 タカヤは相変わらず普通の顔してそう言った。俺はびっくりして、ちょっとすぐには声が出なかった。それからすぐに、かーって腹の底が熱くなって、気がついたら叫んでいた。
「嫌いになったことなんて、ねーよ!」
 このバカ! ってでっかい声で言ったら、今度はタカヤがびっくりした顔になってこっちを見る。俺はその顔にもっとムカついてくる。タカヤは頭がいい振りしてるけど、ほんとはすっげえバカなんだって思う。
 だって、だったらなんで俺らは付き合ってるんだって話になる。好きだって言っただろ。タカヤなんて初めて会った時からムカついてるし、今だってそうだけど、嫌いになったことなんて、ない。なんで分からないんだって、もっと怒ろうとした。
 けど、その瞬間、タカヤがふわーって笑ったから、俺はなんにも言えなくなってしまう。ちょっと口元が上がって、垂れ目をもっと垂れさせてるだけなのに、うれしい、うれしいって言ってるのがすごく分かる顔だった。
「それなら、よかったです」
 そう言うと、タカヤの笑顔がすーっと消えて、またいつもの顔に戻ってしまう。あ、ばか、もうちょっと。
「俺は、元希さんのことすっげえ嫌いだったことありますけど」
 しかも嫌いとか言ってくるし。もう、最低だ、こいつ。でも、タカヤは続けてこう言った。
「ずっと好きでしたから」
 それで俺はどうしようもなくなる。
 できるのは、腹立ち紛れに力いっぱい抱きしめて、ムカつくことばっか言う口をふさいでやることだけだった。
作品名:曜日男・他 作家名:玉木 たまえ