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【かいねこ】鳥籠姫

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「鳥かご姫と闇の王子」

昔々あるところに、それはそれは美しいお姫様がいました。お姫様は姿形が美しいだけでなく、大層歌が上手でした。お姫様が綺麗な声で歌うと、太陽さえ沈むのをやめるほどです。

王様は、大切なお姫様を誰にも取られないよう、大きな鳥かごを作らせ、その中にお姫様をいれてしまいました。

お姫様は、来る日も来る日も、鳥かごの中で歌います。
彼女にとって、鳥かごが世界の全てでした。この中から出るなど、考えただけで気が遠くなってしまいます。

ある夜のこと、いつもはぐっすり眠っているはずの時間に、お姫様は目を覚まします。いつもは閉められているカーテンが開いていて、月の光が射し込んでいました。
お姫様は、あんまり月が綺麗だったので、小さな声で歌い始めました。
その歌声に、星も瞬きをやめて、じっと聞き入ります。
そこに、鳥かご姫の歌声を聞きつけた、闇の王子がやってきました。
夜の闇に生きる王子は、鳥かごの中で生きるお姫様に、一目で恋をします。お姫様を驚かせないよう、そっと近づき、鳥かごの側で耳を傾けます。
あんまりお姫様の歌声が素敵だったので、闇の王子は、姿を隠すことを忘れてしまいました。
お姫様は、驚いて「あっ」と声を上げます。
王子はすぐに、「どうか怖がらないで、美しい姫。あなたの歌声に誘われたのです。決して、あなたを傷つけたりは致しません」と言いました。
お姫様は驚いたけれど、鳥かごの中にいれば大丈夫だと思い直し、「あなたは誰なの?」と聞きました。
「夜の闇に生きる者です。昼があなたがたのものなら、夜は我々のもの」
「まあ、それでは、あなたが闇の王子様なのですか?」
「そうです、鳥かごの姫。私は決して、あなたに触れたり致しません。だからどうか、もう一度歌を聞かせて下さい」
闇の王子に頼まれ、鳥かご姫はもう一度歌います。今度は王子に向けて。
それはとても楽しい時間でした。何度も何度も歌ううちに、空が白み始めてきます。
「もう帰らなければなりません。あなたの歌声を、私は生涯忘れないでしょう」
「また会いに来て下さいますか?」
「ああ、あなたがそれを望んで下さるなら。私は、あなたのまつげが触れ合うより早く、駆けつけましょう」
そう言って、闇の王子は姿を消しました。

それから、毎晩のようにお姫様は王子と会いました。
お姫様は王子の為に歌い、王子はお姫様に外の世界の話をしました。
それは、鳥かごの中にいるお姫様には、想像もつかないような話です。広い空も、月の下で輝く湖も、静かに眠る草木も、お姫様には知らないことばかりでした。
王子の話してくれる沢山のことが、お姫様の楽しみになりました。闇の王子も、鳥かご姫の歌を楽しみにしていました。
けれど、闇の王子には、一つだけ心苦しく思うことがあります。
それは、昼の世界を、お姫様に話して上げられないことでした。
闇の王子は、日の光に当たると死んでしまいます。その為、鳥かご姫には、夜の世界しか教えて上げられません。
けれど、お姫様に、昼の世界を見せて上げたい。鳥かご姫と二人、日の光に輝く世界を見たいと、王子は思いました。

ある夜、闇の王子は鳥かご姫に言いました。
「愛しい姫、私はあなたとの約束を違えます。その罪を、私は我が身で償いましょう」
そう言って、王子は鳥かごの扉を開け、中に入ってきました。驚くお姫様を抱き締め、闇の王子は言いました。
「どうか怖がらないで。貴女に、外の世界をお見せします」
王子はお姫様を抱えて、外へと飛び上がります。
怖くて目をつぶっていた鳥かご姫は、闇の王子に促され、そろそろと目を開けました。

そこには、見たこともない光景が広がっていました。

月の光に照らされ、眠りにつく町並みが広がります。
頬に当たる夜風も、遠くに広がる森も、お姫様には初めて目にするものでした。
「まあ、素敵!世界がこんなに広いなんて!」
「もっと美しいものをご覧に入れましょう」
闇の王子に連れられ、お姫様は様々な景色を見ます。
空高く舞い上がったかと思えば、森に茂る草花を間近に捉え、月に手が届くかと思えば、静かにさざめく湖の水面近くまで降りるという具合に。
初めての光景に歓声を上げる鳥かご姫を、闇の王子は愛おしそうに見つめます。

空が白々と輝く頃、闇の王子は、湖の畔へと鳥かご姫を連れてきました。
「この美しい風景を、貴女と一緒に見たかった」
王子の腕の中、お姫様は夜が明ける光景を、初めて目にします。

夜の闇が朝の光へと移り変わり、静かな湖面に光が反射して、幾つもの輝きが散りました。
目を覚ました鳥達が、朝の到来を告げ、世界が徐々に色づいていきます。

なんて美しいのだろうと、お姫様はうっとりとその光景を眺めてから、王子へと笑顔を向けます。
ところが、闇の王子は、すでに息絶えていました。
愛しい人の亡骸を抱いて、お姫様は嘆き悲しみます。
鳥や獣や森の木々までが、鳥かご姫を慰めますが、お姫様は泣き続けます。
泣いて泣いて泣いて、泣き続けた鳥かご姫は、とうとう一本の木になりました。

鳥かご姫の木には多くの鳥が集い、今でも姫を慰める為の歌をさえずるのです。


昔々の物語。

作品名:【かいねこ】鳥籠姫 作家名:シャオ