【かいねこ】鳥籠姫
「鳥籠姫」
「さあ、こちらです」
館の主人の声とともに、薄暗い部屋に明かりが差し込む。
執事が音もなく滑り込んで、部屋のカーテンを開けた。
光の中、巨大な鳥籠に入れられた青い髪の青年が、うつろな眼差しで歌を口ずさんでいる。
「おお・・・・・・これは見事な」
「魔力で動く人形でしてな。『カイト』という名前です」
客の感嘆に気を良くした主人のディンブラは、愛想良く言った。
数人の男達が鳥籠を囲む。カイトは、視線を動かすことも身じろぎすることもなく、ただ小声で歌を紡いでいた。
「まるで、童話の鳥籠姫ですな」
一人が笑いながら言うと、周囲にさざ波のような笑いが起きる。
ディンブラも笑いながら、「女の人形なら、なお良かったのですが」と言い、鳥籠を拳で叩いた。
「カイト、お客様に歌を」
カイトは、一度口を閉ざすと、今度は澄んだ声を張る。
その旋律と美しい歌声に、客達は一斉に溜息を漏らした。
「これは良いものを聞かせて頂きました」
「これほどの人形、さぞかし値が張るでしょうね」
「いやいや、皆さん、この程度で驚かれては困ります。次はこちらへどうぞ」
ディンブラが客達を部屋の外へ連れ出すと、執事が再びカーテンを閉める。
カイトはうつろな瞳を空に向け、また小声で歌を呟き始めた。
しばらくして、再び扉が開かれる。
一人の女性が、荷物を抱えて入ってくると、鳥籠に近づき、
「お疲れ様、カイト。気分はどう?」
カイトは答えず、ただ歌を口ずさんでいた。
ディンブラの秘書をしているキャンディは、手早く荷物を広げると、香を炊き始める。
「少しは、気分がすっきりすると思うわ。今日は来客があって、疲れたでしょう。後、これ」
持ってきた本を、籠の隙間から中に入れた。
カイトは歌をやめると、無言で手に取り、本を開く。
キャンディはカーテンを開けながら、もくもくと本を読むカイトに、同情的な眼差しを向けた。