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それはちょっとした悪戯

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こんな狭い部屋の中でぴったりと抱きあっていると、どうしていいのか分からなくなる。
ドラコの汗ばんだ額も短い吐息もうるんだ瞳も、ハリーの腰のあたりをひどくゾクゾクさせた。
(こんな蛇の生殺し状態がずっと学校へ到着するまで続いたら、もう僕は死にそうになるよ)
ハリーは天を仰いだ。

「ドラコ、気分はよくなった?」
「そんなにすぐによくなる訳ないだろ」
「あー、早くよくならないかなー」
「そんなに僕のことを心配してくれているのか、ハリー?」
少しだけドラコの口元がゆるむ。

「っていうか、ドラコにキスしたいから。もっとふたりで楽しいことしたいから」
ギューギューギューっと、容赦なくドラコはハリーの両腕をツネって捻り上げた。
「ぎゃーっ!!痛いなーっ!もーっ!!」
ハリーが悲鳴を上げる。

「ハリー、貴様は体調の悪い僕を目の前にして、いったい何を考えてやがる!」
ドスのきいた声でドラコはにらみつけた。
「君のことを考えている!毎日考えている!ずっと好きだと思っている!いつかプロポーズできたらなって考えている!それからどんなキスが君は好きかなって考えている!あと、今日の列車に乗り込んできたときの君の私服がとても素敵だったと感激している!それから―――」
ハリーはずっとそんなことを息もつかずにしゃべりだした。

「ああ、くそーっ!もうしゃべるなっ!」
ドラコは必死でそれを止めた。止めないと本当にずっと意地になって、ハリーはしゃべり続けることを知っているからだ。
以前、何度か経験して、ドラコはうんざりしたことがある。

ドラコは深くため息をついた。
「どうしたの、ドラコ?そんなに眉間にしわを寄せて、ため息なんかついちゃって?」
「……相手を選ぶのを失敗したかもしれないと、後悔しているんだ。ひどく、今後悔している。なんのことを言っているのか、もちろん分かっているよな、ハリー?」
じろりと相手をにらんだ。

ハリーはむっとした顔で相手の髪の毛を掻きあげると、ほほに乱暴にキスをした。
それをうるさそうに邪険な仕草で、ハリーを振り払う。
「僕が苦しんでいるのに、お前は何するつもりなんだ?!」
ひどく怒って抗議の視線を相手に向けた。

それすらもかわいくて、ひどく憎らしい。
イライラとした不機嫌な表情もいいし、こんなに献身的に介護している自分を邪険に扱う態度が憎たらしい。

(僕のことを、クラッブやゴイルと同じランクに考えているんじゃないのか、もしかして?)
ドラコがそう考えていることは多いにありえた。
今までの自分の扱いが、あまりにもぞんざいすぎるからだ。

「僕は君が何と言おうと、恋人だからねっ!それ以下なんか絶対に嫌だっ!許さないから」
ハリーは相手に思い知らせたかった。
自分の存在を。
「都合のいい人」でも「手下」でも「子分」でも、自分はない。

ハリーは畳み掛けるように、ドラコの顔中にキスをする。
もっと自分を知って欲しかった。
思いに応えて欲しい。
ほほに、耳たぶに、首筋にと、唇を押し付けていく。
舌で柔らかく舐める。何度も味わうように。

「止めろ!」
腕を突っ張りからだを離そうとしたがちっとも身動きできなくてとうとうドラコは怒り、ハリーから離れて立ち上がろうとした。
「今はそんな気分じゃない!」
ハリーはそんな忠告を丸っきり無視してドラコの反らしたからだを追いかけるように、自分の腕に強く引き戻して、もっとたくさんのキスを顔中に浴びせかけてくる。
「ドラコ、好きなんだ」
思いのたけを告白するように、熱い思いが口をついて出た。

一方ドラコは自分の上で相手から好き勝手なことをされて、もっと気分も、機嫌も最悪になってくる。
「―――ああ、もう、うっとおしいっ!」
ドラコはハリーの下で暴れたが、体力の差が大きすぎた。
「いい加減にしろ、ハリー!これ以上僕に、勝手なことをするなっ!キスなんかいくらでもしてやるから、今は止めろ!」
そう言うと怒った顔のままハリーの顔に自分から顔を寄せて、ぶつけるようなキスをした。
ぎこちないまだ慣れていない仕草で、ただ唇を重ねることしかしない。
キスというものは本来そういうものだとドラコは思っているらしい。

ハリーは驚きと嬉しさで相手の頭を抱えると、もっと深くドラコとキスを楽しもうとして、その相手の唇をなぞって舌を絡まそうとする。
ドラコは真っ青な顔で、慌ててハリーから退いた。

「キスをしてやったんだから、もう気が済んだだろ?だからもう、今は僕にキスをしたり、変なちょっかいをだすな。いいか、分かったな、ハリー!」
「そんなー。もっとキスしよう。もっと楽しいことをしようよ。」
ハリーはドラコにすがって、甘い声で囁く。

「今はやめてくれっ!」
ドラコは必死で逃げる。
ハリーは逃すまいと、ドラコにじりじりとにじり寄った。
もうハリーの顔は(ドラコを最後までいただいちゃいま~す)の満面の笑みだ。

今ドラコは乗り物酔いの真っ最中で体調が最悪で、からだを動かすことさえままならない。
ぐったりとしたからだが水の中にいるように、ひどく重たい。手足が鉛のようだ。
自分のからだなのに、自分の意思では動いてくれなかった。

その今はあまり動けないという弱点を突いて、ハリーがドラコのズボンのベルトに手を掛けてきた。
しかも素早いもう一方の手は胸元のボタンを外して、その中に指を這わせてきたので、さすがのドラコもぶち切れた。

「僕は本当に乗り物酔いで、ひどく気分が悪いんだ!!もしこんなことを続けるつもりなら、覚悟しろよっ!お前の顔面に、容赦なくゲロを吐くぞ!いいかっ!」
ドラコとは思えないほど、ありえない言葉で啖呵を切る。

予想だにしなかったドラコの言葉に一瞬ハリーの動きは固まり、そして次にクラクラと眩暈がした。
(こんなきれいな顔で、こんな下品なセリフを吐くなんて、さすがはドラコだっ!)
盛大にハリーの顔がニヤけまくる。

上流階級特有の高慢さと、それに相反するような口の悪さ。
上品であり、どうしようもなく下品。
暴力的で傲慢なくせに、とことん意気地なしだ。
ドラコの態度は気まぐれに甘えた顔で油断させておいて、その差し出された手の平に容赦なく噛み付くようなものだ。

彼は両極端で掴みどころがなくて、めったにお目にかかれない造作のよい顔と相まって、そこがとても魅力的だった。
死ぬほどハリーをメロメロにさせるものだった。

「―――いいっ!たまらなく、いいっ!君は最高だ!!」
ハリーは心の中でガッツポーズを取る。
「いったい何がいいんだ、ポッター?!!」
ひどく怒ったときドラコは相手のことを苗字で呼んだ。

「ドラコはやっぱりサイコーだっ!」
ハリーは感激のあまり相手に抱きつく。
「だから、僕に抱きつくなって!本当に怒って、今度はお前の顔を殴るぞっ!」

嬉しそうな顔でドラコにほおずりする。
「ああ、もう、殴ってくれっ!蹴ってくれっ!喜んで僕は受ける。舐めてもキスしても、君の好きにしてくれっ!どんなことされても、君のことが大、大、大好きだ!」
ハリーは舞い上がってもう自分が何言っているのかすら、分かっていないらしい。
作品名:それはちょっとした悪戯 作家名:sabure