二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

女神の祝福

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
大学卒業後、就職してめでたく社会人になった二人だったが、平日はお互い仕事、休日は上司との付き合いもあって、二人だけで過ごせる時間は大学までのそれと比べて格段に減った。
今日も実に一ヶ月振りのデートだった。デートと言っても、街に出てゲームセンターへ行ったり、レンタルショップでお勧めの映画を教えあったり、食事をしたりするだけの他愛ないものだったが、こうして二人で過ごしているだけでも三国は互いの絆を深く感じることができたし、南沢もそう感じていると信じられた。


「そういえば、田中が結婚するらしいな」
ファーストフード店での昼食。ポテトを行儀悪く指先で揺らしながら南沢が話を切りだした。
「ああ、俺のところにも結婚式の招待状が届いてた」
大学での共通の友人からの結婚式の招待状。今年に入ってからでも二通目で、大学を卒業してからはこれで五通目だった。
「出席するだろ?」
「するよ。でもなー、俺、今月末に他のやつの結婚式に出るからご祝儀赤字だぜ」
喜ばしいニュースではあるが、眉根を寄せずにはいられない南沢は自棄を起こしたようにコーラを飲み干した。
「皆、どんどん結婚しやがってよ。他にも子供が産まれましたとかさー。久しぶりに連絡があったと思ったらそればっかりだ」

自分たちの年齢を考えれば、友人たちが結婚したり出産するのはまったく不思議なことでもなんでもなかった。
だが、三国には最近その事実がひどく肩に重く伸し掛かった。
向かいに座る南沢を見る。南沢は、どこを見ているのかわからない視線で窓の外を眺めていた。
南沢と初めて出会ったのは、中学に入学してから。付き合い始めたのは、高校を入学して間もなくだった。出会ってからの時間も含めれば、もう十年以上の付き合いになる。

(もし、俺たちが男と女なら、今頃結婚とかしてたのかな)

「三国」
突然名前を呼ばれて、意識を飛ばしていた三国は反応に遅れた。
「なんだ?」
「ケチャップついてる」
南沢は「ここ」と、自分の唇の右端を指した。三国は慌てて備え付けのナプキンで口を拭った。
その様子をとても楽しそうに見る南沢の顔を見て、三国は先までの考えを振り払った。

(もしも、なんて仮定の話をしたって意味がないしな)
(俺は、いまのままでも十分幸せだ)

作品名:女神の祝福 作家名:マチ子