Shadow of HERO
真っ赤な炎に包まれるリビング。
倒れている両親とそんな2人の前に立つ誰か。そしてもう1人、恐怖で身を凍らせていた己の前に誰かが割って入ったのを覚えている。安心させるために己を抱きしめ、微笑みを浮かべて早く逃げろと言ってくれた………気がする。
この目で確かに姿を見たし、あの時のことは強烈に覚えているはずなのに、それがどんな容姿をした人物なのかが犯人と同様に思い出せない―――…
Shadow of HERO
「動くな!動いたらこいつがどうなるか分かってるんだろうな!?」
「うわぁぁぁぁ!!ママぁ!!!」
首都シュテルンビルド内のとあるデパートで、ヒーロー達は膠着状態に陥っていた。
今回の事件はごく有り触れた立て篭もり型の強盗事件。ただ犯行グループが一般人とNEXTの混合だったため、ヒーローが出動した。大きなデパートで侵入口は多くあり、ヒーロー達は裏口から個々に侵入し次々と犯人を捕らえて行ったのだが―――残り1人となったところで犯人が逃げ遅れた子供を見つけ人質に取ってしまったのだ。
銃を子供の米神に当てヒーロー達を威嚇する男を見て、ブルーローズやドラゴンキッドが悔しそうに歯噛みする。その中でバーナビーは冷静に、己と男の距離を考えていた。
(この距離なら能力を使って相手の懐に飛び込むまで、1秒足らずか。…奴の懐に入って、銃を捻じ曲げる。)
動揺した男が引き金を引くかもしれないが、こちらの方が早いだろう。子供は助かるしポイントも稼げる、何も問題ない。
そうして、バーナビーが能力を発動しようとした時だった。
「右後ろにいる奴をどうにかしろ!」
張りつめた空気の中に、聞き慣れない声が響いた。
咄嗟に右後ろに目をやると、ブルーローズの背後に手榴弾らしきものを持った男がいた。
「ブルーローズ!」
「ええ!」
ブルーローズが男の持っている物を凍らせる。バーナビーはその隙に子供を人質に取っていた方の男へ駆け寄った。
「く、来るな…!」
男が我に返り、銃を向けてきた。しかし、もうここまで来たら己の勝ちだ。
銃身を掴むと、ハンドレットパワーでそれを捻じ曲げた。
「悪かった!もう抵抗しねぇから、許してくれぇ…!」
戦意喪失した男を油断することなく縛り上げると周囲を見回した。
(あの声は一体誰だったんだ…?)
しかし、その人物はとうとう見つかることはなかった。
作品名:Shadow of HERO 作家名:クラウン