Plam2
沢田綱吉の精神は基本、平均で構成されていた。許容力だけがずば抜けて高く、異常というよりは超人レベルだった。が。残念なことに彼の周りは超人レベルの許容力ですらも処理しきれないことが度々起こるのである。そのため。あまり目立って発揮されることはなかった。また、発揮されればそれは、一部の人間にとって大変魅力的にみえるので。彼の貞操などを危うくする原因となっている。
自身の中にたくさんの才能を眠らせ、サボらせているそんな沢田綱吉。彼の性格はクセがあまりない。切れやすくもなければ破壊願望もなく、支配欲求とも無縁だ。
だから、先程から扉をノックしつづける音に。沢田綱吉が殺意を覚えるほどイラつくなど、本来はあり得ない。
トントン。トントン。
リズムは一定。急がせるでも不安がらせるわけでもない用事で来たのだよ。そうささやくよう。
その、優しさと言っていい行いに。沢田はだまされやしないと歯を噛み締める。
だまされるものか。半年かけた仕事を潰され、部下もたくさん傷つけられた。正直なところ首の皮一枚でなんとか面目を保てたのだ。いや、そう仕向けられた。ほとんど殺しておいてそのくせ、生かす。手負いは手強いから面白いとでもいうのか?生命維持装置に左右される命を、それでもまだ油断ならぬと、牙を向くと思っているのか?
その、通りだとも。
ドアを、叩く音はやまない。入りたければ入るがいい、なんて、いう必要もない。たとえドアの前、異次元が立ちはかろうとぶち破って艶やかに笑むのだから。必要ない。なにも、何もかもがあんたには無用だ。
だから、ドアを叩くな。
オレの、オレの意思で開けられる、ドアを望むな。
ごめんなさいと言わないくせに。逃げずに挑んでくる、あんたがきらいだ。