Plam2
DearX!の断片?
最強じゃなきゃ許されないの。涙がまぶたの裏、溜め込まれるのは生理現象。限界が来て、涙腺がぱつんぱつんになったら好都合。そのままうまいこと壊すの。眼球がからからで困ったら目をつむればいいだけだもの。でもどうしても涙ぽろんしたくなった時用に棺桶が用意されてる。だから大丈夫なの。最強なの。もう、誰も。もう誰もオレの弱いところなんか見えやしない。見せやしない。
だから、あんたが気づいたのは、オレのミスだ。
どんな強固な城だって、蟻を遮るのは難しいって知っていたのにね。でもまさか、あんたが気づくとは、気づくとは。
想定外だった。そうだろう?あんたとオレで、仕事の合間の雑談で、結婚願望の有無とか子ども希望か、とかの話なんてさ。ファンタジーみたいなもんだ。京子ちゃんが結婚したときもそんな話題にはならなかったのに。
それだけ、あんたに子供が生まれたことは、イレギュラーだった。そうだろうヒバリさん。
あんたがきみは子どもをつくる甲斐性もないの、ときいちまうくらい、おかしなことだったね。だからオレは油断してしまったんだよ。誰にも一生いわないつもりでいた。ううん。そんなこと考えていたことさえ知らないでいられたんだと思うよ。
似ないでほしいな。
目を、見開いたねあんた。その顔をみてようやく自分でも気づいたよ。
ああ、オレ。嫌なんだなって。
オレはもう、自分の血を遺すのがこわいよ。子どもがオレに似てしまうのがこわい。それ以上に自分の子どもに、家を継がせる道具なんだろ、と言われる日が来るかもしれない。ことがこわくてたまらない。脳なんて電気信号の集まりなんだっていうなら。このこわさの正体が電気信号なら。生まれる兆しすらない我が子に嫌われる、想定をした次の瞬間。脳ミソオフにする設定をしてくれ。何事もなかったように再起動するから。オレには子どもができるファンクションがあること、完璧に忘れるからそうしてほしい。
オレはこれからも安っぽい最強を、なんとかまとって。ハリボテの強さで暖をとって、これまた安い涙を胃に落とすだろう。さみしいよ、ひとりはさみしいよ、だれかそばにいてくれよとわめく身体を抱えて。微笑むだろう。
だから、あんたも、笑え。いつものように生態系の上、ミジンコみたいなオレには目もくれずに。ヒバリさん。だって、オレたちは、
王様は笑うのが、仕事!