BOKORI TITLE 10
13:徹底的に
あなたの望み通りのものができました。
沢田はここ五年雲雀から殴られ続けている。君なんか忘れたい、そう言われては殴られた。その痣を隠すことなく微笑む。
寸毫。微塵。残すことなく記憶を消し去る機械が。みんな頑張ってくれたのでできました。さあ。
今まで一度も見せなかった笑顔と、はじめて自主的に雲雀へ伸ばされた沢田の手。
ヒバリさん、どうぞ。
これでやっと、あなたもオレもお互いから解放されるんです。これが、オレたちのスタートです。
雲雀は伸ばされた沢田の手をとって、腰に腕をまわし、口を重ねる。そして耳元でささやく。
ヤダ。
や、なんですか。
うん。
あなたが忘れたいっていったんですよ。
うん。
なのに。
君のこと全部忘れたいのは本当なんだけれど。
うん。
全部忘れるより、全部ほしい。そうさっき気付いた。
でしょうね。
君、気付いてたの。
あんたは、気付かなくてよかったんですよ。
ヤダ。
作品名:BOKORI TITLE 10 作家名:夕凪