BOKORI TITLE 10
12:立てない
世界の果てまでひとり、いこうとする背中だった。
訊かれたことがある。下世話にも。"なぜ彼を選んだ?"と。
僕はその中のひとつにも。訊いてきたのが赤ん坊だったとしても答えてなどやらない。
たくさんの人間とかかわり、たくさん喜怒哀楽。感情を揺り動かして。いつもなにかを震わせていた子ども。
白旗を背中に背負っているくせに、結局一度だって地面に突き立てようとはしなかった。
誰かが、側にいれば決して。
そして今。
世界の果てでたったひとりぼっちになってももう。彼は、白旗を突き立てはしない。
あんな弱い世界最強を放っておくわけがない。
作品名:BOKORI TITLE 10 作家名:夕凪