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不思議の国にて。

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目が覚めると知らない天井だった、というより知らない部屋だった。
 柔らかい布団の敷かれた寝台に豪奢な家具、6畳一間の自宅とは比べ物にならない広い空間。此処は何処だろう、と首を傾げて寝台を降りる。クロゼットを開けてみれば白を基調に緑のアクセントの入った服ばかりで、小物入れには緑色のサングラス。これを着ろと、とげんなりすれば寝台に制服が一式、枕元に畳まれた状態で置かれている。紛れもなく自分の制服だったが、それもそれで怪しい。しかしまあコスプレ紛いの恰好よりはマシだ、と危険物を仕かけられていないことだけ確かめて袖を通した。
 しかし広い家、というより屋敷を出れば何方を見ても衣装染みた恰好の通行人ばかりである。極彩色の衣類に目を痛めていると、通行人の方は此方を物珍しそうに眺めている。居た堪れなくなって屋敷へ引き返そうとしたところで、玄関に馬車が停車した。
「迎えに来たぞ、学園天国」
「おや? どうしたの、趣旨変え?」
 御者は首がなく、ない首の上に花飾りのついた帽子を被り、黒いドレスを着た女性で、どういう訳か喋っている。その隣には白い上着に同じく白いネクタイをした眼鏡の優男、両者共に彼の知る人物によく似ていた。
「セルティさん、と、新羅さん?」
「うわあああああああああぁ!?」
「どうして僕達の名前を知ってるんだい、学園天国!? 僕はルージュの伝言にしか教えてないのに!」
「私だってそうだ、DIAMONDSにしか教えてないぞ!」
「え、あの、どうしたんですか? 僕は学園天国じゃなくて、み――――」
「言っちゃ駄目だ!!」
「そうだ! 大切な人にしか教えちゃ駄目なんだ!」
慌てふためく彼等に再び屋敷へ押し戻され、帝人は2つ理解した。

 1つ、どうやら彼等は自分の知る2人ではない。
 1つ、どうやら簡単に名乗るべきではない。





 勝手知ったる他人の家、とばかりに2人は茶席を設け、まずは帝人の話を聞く。目が覚めたら此処にいたこと、を自分の知る彼等のことを話せば、彼等は納得がいったように頷いた。
「平行世界だな」
「きっと君は学園天国と入れ替わりに送られてきたんだ」
そうと分かれば、と2人は帝人を質問責めにする。主に帝人の世界の自分達について。
「お二方は僕の世界でも仲が良いですよ、恋人同士です」
「なんだ、まだ恋人なのか」
「私達は夫婦なんだよ」
早く子供が欲しいね、と笑い合う2人に微笑ましい気分になる反面、どうやって籍を入れたのか、子供に首はあるのか、そもそも子供を作れるのか、と様々な疑問が浮かぶ。口にする勇気はないが。
「それにしてもみー君は大人しいね、学園天国とは大違いだ」
そして妙に可愛らしい渾名をつけられた、名乗れないので仕方ない。
「そんなに違いますか?」
 帝人にはルージュの伝言もDIAMONDSもセルティと新羅にしか思えないが、2人は帝人と学園天国を全く別の人物とみているらしい。大違いだ、と声を揃えた。
「誰だろうと敬わないし」
「そのくせ自分が軽く見られると潰すし」
「物凄い短気だし」
「毒舌だし」
「日用品を用途外の使い方するし」
「気に食わない人間は燃やすし」
すみません、後半は当て嵌まらなくもないです、とは言わないで置く。どうも此方の帝人が多大な迷惑をかけているようで、頭を撫でている2人は小動物に癒されている表情をしていた。大人の、とはいえ幻想を故意に壊そうとは思わない。
「みー君みたいな良い子が良いね」
「学園天国も大人しければ可愛いんだがな」
実はカラーギャングの創始者です、早まらないで下さい、と言えるなら言いたかったが、口からは乾いた笑いしか出てこなかった。これ以上2人に妙な好印象を与える前に話題を変えようと今度は帝人から質問を投げる。
作品名:不思議の国にて。 作家名:NiLi