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∽夏の陽

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「じゃあこうしよう。僕も秀吉も、仕事ついでに世界中で遊び回るつもりだから、そのとき通訳になってくれればその言葉を勉強した分は問題無し。これなら、僕らも道楽ばっかりじゃないって他の人に威張れるからね?」
安心させるように、にっこり笑って提示すれば、音を立てそうな勢いで三成の首が縦に振られた。
そこに吉継が合いの手のように、よくもまあこの歳でと思うような人の悪い顔で混ぜ返す。
「諦めが肝心と言うであろ、三成。竹中様はワレらが習い事に慣れてきてヒイヒイ言わなくなったのが詰まらんのよ。習い事がどんどん増えて、ワレらが目を回すのをお望みよ。」
吉継っ、と叱責するように甲高い声が上がり、竹中が可笑しげに大声で笑う。
「確かにそれも面白そうだねえ。君たちが習い事に慣れたみたいだからというのもあるけれど、本当はどこまで君たちが頑張れるのか知りたいんだよ。ほどほどでいいからね。」
秘密めいた小さな声で教えれば、三成は瞳を輝かせ、吉継はきょとんと固まった。
それから徐々に首元を夏の暑さのせいばかりでなく赤くしてそっぽを向く。
余計な仕事を自ら作らなくとも認められていること、新しい仕事を与えるから物騒な悪戯は控えること、と言いたいのが解ったらしい。
「・・・竹中様は狡いズルイ。」
小さく呟かれた声は思いの外に子供のようで、竹中は眼を細めた。
「ああ、今日も暑くなるね。」
扇子でハタハタ扇ぎながら。
夏の眩しさに、耐え切れないように。
作品名:∽夏の陽 作家名:八十草子