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横島受けいろいろ

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雪横



 口付けが甘いというのは、何の戯れ言だろうか。
 この男とそれをする度、いつもそう思う。
 噛み付く様な、飢えた獣の様な、乱暴とさえ言える様な激しいそれには、甘さなど感じない。
 ただ、ぼんやりとしてくる頭の中、一つの単語が浮かぶ。
 ──────熱い。
 熱い、と。ただ、それだけが。
 身体中熱に支配される感覚と共に、どこかに堕ちていく様な錯覚。
 受ける熱、受け入れる熱、自らが発する熱。
 甘さなどより、よっぽど強い。
 あぁ、でも、こいつらしいな。
 そう思って笑う俺に、眉根を寄せる様がおかしくて、また笑う。

「……んだよ、気持ち悪ィな」

 言葉にだって甘さは無い。
 ただ、熱を伴う唇を降らせて。

「……喰うぜ?横島ぁ……」
「……いつも喰ってんだろーが。馬鹿雪」

 やっぱり甘さなんて欠片も無く。
 そんな自分達は、この上無くらしいと思った。

作品名:横島受けいろいろ 作家名:柳野 雫