横島受けいろいろ
鬼横
……な、なんか、落ち着かない。
普通に、いつもの様に鬼道の家で。
フツーに、本当にいつもの通りに、二人でまったり過ごしているだけなのに。
……な、なんでだ?
ちら、と目を横に向けてみる。
鬼道政樹。
六道女学院霊能科教諭。
式神使いで努力家の、どこぞでの通称は最強保護者。
そして俺の、現……恋人。
……未だに何故だか解らんが。
そんな事を考えてぼーっとしてたら、鬼道……いや、政樹が動いた。
こちらを向いて、笑む。
……うあ、気付かれた。いや、既に気付かれてたか?
と、表情に微かな変化。
ただでさえ笑んでいた顔に、なんつーか……愛しさ、みたいなのを加えて笑みを深める。
あれは、恥ずかしい台詞を言ってくる時の顔に似ている。
更に、頭撫でながらにこにこしながら抱き締めてみたり。
……ぎゃあ。
なんだこれ、なんだこれ!?
俺今絶対顔赤いよなっ!?
変な事思い出す俺の脳味噌のあほぉぉぉ!!
「……忠夫」
「ひゃいっ!?」
唐突に呼ばれて、返事と共に慌てて顔を向ける。
つーか反射的に出た声は裏返ってるし、驚きのせいで振り向く勢いが凄い事になっちまいやがった。
……しかも絶対まだ顔赤い。
なんだってんだ俺はー!!
鬼道は続きの言葉も無く、ただにこにこと俺を見ているだけで。
……なんなんだよぉ……。
テンパって途方に暮れて。
そんな俺の心情もお構いなしに、鬼道はにこにこ笑ってる。
……くそう。なんだってんだこの余裕。
年上だからって、いい気になってんじゃねーぞっ!!
……決めた。
理不尽だろーとなんだろーと、俺の機嫌を損ねたお前が悪いっ!!
そう、お前の所為なんだからなっ!?
……だから。いーんだ、こういう事しても。
ごろん、と横になる。
かなり唐突に。
いや、表情はころころ変わってたんで、何となく心情は知れとった訳やけど。
……いやはや、こうくるか。
自分からそうしといて、顔が真っ赤なのが可愛いというか何というか。微笑ましいと感じるのは間違いでは無いと思う。
膝の上。
こちらには決して目を向けない様に。
「……昼寝か?」
「そーだよっ!!お前枕なっ!!決まりっ!!」
「……決定事項かいな……」
漏れる苦笑に、じろりと睨まれる。
……そんでもこっちを見てくれた事に対しての嬉しさだの喜びだのが勝ってる辺り救えんね。
まぁ、別にええけど。
「……何か文句あんのか!?」
いかにも不機嫌そうな顔で問うてくるけれど、顔が真っ赤な時点で威力も効果も全く無い。
ただ可愛いとしか思えん訳やが……自覚無いんやろなー、この子は。
あ、不安そうな顔になってきた。
……怯えた仔猫?
ん?ボクちょっと目ぇおかしいか?いや、惚れた欲目いうやつか?
……まぁええか。可愛いのは一緒やし。
っと、返事せんとあかんな。
悪い方に考えとる時の顔や。
「なんも?」
笑って、頭を撫でてやる。
うぐっ、と呻いて詰まって、ぷい、と顔を逸らす横島。
頬を膨らませている辺りが何ともはや。
……襲ってほしいんか君は?
男にそんな感情を抱いとる自分はどっか終わっとる気もするが、今更と言う他無い。
随分と穏やかな時間が続く。
男同士で何やってんだ、と思いつつ。
……あーもー、ちくしょう。
なんだこの心地よさは。
心の中でブツブツ言いながら。
ふてくされた様に目を閉じた。
随分と穏やかな時間が続く。
目を閉じて寝に入った子供のあどけなさに目を奪われながら。
あ、放置か?
……うわ、鬼やで、横島ー。
胸の内でそんな突っ込みかましつつ。
起こさぬ様静かに、そしてやはり幸せそうに、苦笑した。