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小林賢太郎ライブポツネン2011 The SPOT 二次小説

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 狭く、薄暗い穴の底。
「……ーい」
 一人ぼっちで…居心地のよい穴の底。
「…おーい」
 そこで、膝を抱えて眠っていた僕を
「おおーい」
 上から降ってきた声が呼び起こした。
「ん…」
 軽く頭を振り、僕は上を見上げる。
 暗い地の底から見上げる空は、穴の形に丸く小さく切り取られ、とても眩しく見えた。
「なんですかあー」
 口元に手を当て、上へと声を張り上げると、穴の縁からひょっこりと頭が出た。
「おお、起きたようだな」
 それは、なんだか奇妙な人であった。
 帽子をかぶっているにもかかわらず、その上から薄い冠をかぶっている。
 そして、こちらを見下ろしながらにこにこと笑っていた。
「なんですかあーっていうか誰ですかー」
「おお、これは失礼した」
 再び問いを投げかけると、その人は少し慌てた様子で身だしなみを整える(といっても体は穴の外なので僕には見えないのだが)と
「えー…おほん! 王様は王様である!」
 そう名乗った。
「…おうさま…?」
 まさか自分から『王様』を名乗る人がいるとは…
 僕の驚きには気づく様子もなく、彼は一段と胸を張る。
「そう、王様である! 王様はヒトツボ王国の…と」
 そこまで言って、彼は何かを探すように穴の中を覗き込んできた。
「どうしたんですか?」
「うむ…王様は王様であるのだが、こうして人を見下ろしながら話をするのは性に合わないのでな。そちらに降りるか、そちらに上がってもらうかしたいのだが…何かないか?」
「たぶん…あなたから見て右前の方にロープが垂れてると思います、けどそれ、下までは届いてないですよ」
「おお、そうかそうか! 長さについては心配しなくとも良い。こう見えて王様いろいろ持っているのです」
 そう言いながらロープの元まで回りこみ、手に取るとするすると引き上げ始めた。
「…………」
 どうやって降りたのか、とかこんなところで何をしているのか、とかいろいろと聞かれないことに疑問があったが、そんなのは僕にとって大したことではなかった。
それよりももっと大事なことを考えていたからだ。

『これで僕の居場所が出来る』

 あの人が降りてきたら、何か適当に理由を付けて先にロープを上ってしまえばいい。
 あとは引き上げるなり切るなりしてしまえば、僕の目標は達成される。
 もし僕が上っていくことになった場合だって、その場でちょっとあの人の背中を押してやるだけでいい。
「ふむ、これはずいぶんとしっかり固定してあるのだな。ではここにこれをこうして…」
 何も知らない彼はひとりごとをつぶやきながら作業をしていたようだが、やがて立ち上がるとこちらにロープを示しながらこう言った。
「これからこのロープを落とすから、ぶつかったりしないように注意してくれ。王様も気をつけるし、そもそもこれがぶつかったぐらいで怪我をするようなことはないとは思うが、万が一のことがあっては申し訳がないからな」
「わかりました」
 やがて目の前にロープの先が降りてきた。延長部分には、どこかで見たようなリボンがくくりつけられている。
「さて…ではこれから王様がそちらに降りてゆくからな。しばらく待っていてくれ」
 そう言って彼は、ロープを伝い降りだした。
 だんだんと男の尻が降りてくる光景は正直いってシュールだった。…あまり考えないようにした。
「これは…なかなか…骨が折れる…っと」
 穴の底に降り立った彼は、こちらに背を向けたままぱんぱんと手を払った。
 さて、どう理由を付けて先に上ってやろうか…
 僕がそれを思いつくよりずっと早く、彼は僕の方へ向き直るとこう言った。
「ところで…君はうるうびとでよかったかな?」
「!」
 思いもしなかったその言葉に思考が停止する。
 その様子を見た彼は、一人納得した様子で深々とうなづいた。
「やはり…こんなに深い穴の底でぐっすり眠るほど落ち着いていられるのはうるうびとぐらいだろうからな」
 そして彼は僕の手をつかむと…大きく笑った。
「会えて良かった!」
「…え…?」
「王様はうるうびとを捜していたのだ! どうしても頼みたいことがあってな」
「な…なんですか」
「うむ。うるうびとよ、我が国、ヒトツボ王国の国民になってはもらえんだろうか!」
「…………は!?」
 僕は今度こそ面食らってしまった。
 誰からも必要とされない僕を捜していたばかりか、自分の国の国民にしたいだって!?
 混乱している僕をよそに、大袈裟な身振り手振りを交えて彼の力説は続く。
「我が国は良いぞ!国土は一坪、国旗は日の角、通貨単位はポット。国鳥はハトで国獣はゾウだ。もちろんハトもゾウも国内にいる!どうだすごいだろう!」
 ゾウ、と言ったときの彼の目はものすごく輝いて見えた。
「国土は狭いが、その分国民も少ない。何しろ王様一人だけだ!だからいくらうるうびとだろうと余る心配はまったくない!それに王様はこうして降りてきたのをみても分かる通り、王様だからといっていばるつもりはまったくないのだ。王様も一国民として汗水垂らしながら国に貢献する所存である!ちなみに我が国では現在、アジアの東の国物産展を行っているぞ。王様が自らの身体をフルに使って集めてきた様々な物品が間近で見られると話題になる予定だ」
 そこまで一気に言い切って、満足気に僕を見る。
 僕は答えることが出来ない。
 展開が早すぎてついていけないし…なにより僕は、これまでいろいろと裏切られすぎた。
 ただでさえ突拍子も無いこんな提案を、はいそうですかと鵜呑みにできるわけがない。
 その沈黙を、この人はどう受け取ったのか。
 彼は急に神妙な顔つきになると、僕の手を取り直してこう言い出した。
「ついさっき会ったばかりの王様なんかに急にこんな話をされたところで信用出来ないのはよくわかる。…だからこういうのはどうだろうか? とりあえずうるうびとは、このロープを使って上へ上るのだ」
「え…」
「上りながら王様の提案をよく考えて欲しい。そして上りきったときにやはり王様を信用出来ないなら、目的通りロープを引き上げてしまってくれて構わん」
「!!」
「だが、少しでも王様を信じてみようだとかそういうことを思ってくれたなら、王様が上ってくるのを待ってみてはくれぬか? そうしてくれたら王様は喜んでうるうびとを我が国に連れて帰ろう。どうだ?」
「そ、それは…」
「とにかく!決定権はすでにうるうびとの手にあるのだ。ほら!」
 僕は困った。
 男は僕の心境を知ってか知らずか、僕の手に強引にロープを握らせるとにっこり笑って一歩後ろに下がった。
 僕は悩んだまま…やがてゆっくりとロープを上りだす。
 頭上には、日の光。
 足元には、男の笑顔。
 ロープは僕の手の中にある。
 僕はどうしたらいいんだろう。
 僕は。
 僕は…