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追う阿呆追われる阿呆

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「・・・ごめんなぁ、楓」

 俺は、あのあと逃げ込んだ下水道の壁に頭を預け、小さい声で呟いた。 
 例え覚えられていなくても、迫る顔が怖くても、知った顔をみるとやっぱり少しほっとして。
 そしていつものようなけれど違った会話をして、いつも通りの彼の笑顔を見てしまって、なんだかとっても悲しくなって。

「一人って、すっげぇ寂しいなぁ。パパすっかり忘れてたわ・・・」

 音量を押さえていたつもりなんだが、特殊な環境だからかどれだけ声を絞っても反響する。
 俺は頭を元に戻して、一度ふー、と息を大きくはくと、

「よし!」

 パシ、と両頬を叩いて、気合を入れて下水の臭い漂う奥へとすすんでいった。
 ・・・にしても、と歩みを止めずに一人頬をかく。
 俺が暴れた時は、倒れるのも承知で賭けでやったんだけれど、あの時スカイハイの奴俺を地面に押さえつけてもよかったはずなのに、自然に庇ってたよなぁ・・・。

「・・・つーかアイツマジ石頭だよな、すっげぇ痛いんですけど・・・」

 脳裏に過る奴の目をつぶって真っ赤になった顔やら、逃げられないようにだろうがどうしてかふつーに腰添えられた腕の感触を思い出して俺はもう一度頬をはたいた。
 胸元からじわじわ湧き上がってくる熱は、今は無視!!






                        [ 追う阿呆、追われる阿呆( 同じ阿呆なら××にゃ損々! ) ]

作品名:追う阿呆追われる阿呆 作家名:草葉恭狸