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恋心ごと喰らい尽くして

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「賢い君なら分かっているだろう?答えは一つだ。―――もう一度聞こう、今君の傍にいるのは誰だ?」


ぞくり、と背筋を走った何かに、帝人の口元は象った。


それはそれは、歪んだ、おぞましくも美しい、微笑みが。


白い、争い事には欠片も向かない細く弱い手が伸ばされ、男の頬に触れ、そして彼の失った右目に刻まれた傷跡を柔らかく撫ぞる。愛撫にも似た触れ方に、男の口角もまた釣りあがった。
届かない想い、手に入らない愛、失った恋。
簡単に忘れられるほど、帝人は器用な人間でもないし、執着の薄い人間ではない。欲しくて欲しくて、未練がましく心の中で燻ぶらせてしまうほど、欲しくてたまらなくて苦しくて苦しくて辛かったけれど、この人がその想いも愛も恋も全て、帝人ごと喰らい尽くしてくれるのなら。
そんな帝人を愛してくれるのなら。
それはとても甘美なことだと、帝人は微笑みを刻んだまま想った。


「今、僕の傍にいるのは貴方です、赤林さん。―――貴方だけだ」


男が低く唸るように笑った。
「それでいい」
視界の隅にきらりと光る金色が見えたような気がしたけれど、帝人の淡く綻んだ唇に獣が噛みついた時には、それも一瞬にして掻き消えた。



消えない想いならいっそ喰らい尽くして僕を救って。

作品名:恋心ごと喰らい尽くして 作家名:いの