Distorted Love 8
「…帝人君は強くなったね。その相手が俺じゃなくて妬けるよ。」
「臨也さんのおかげです。あんなことがあったから僕は自分自身に向き合えたんです。だからその原因を作ってくれたのは臨也さんなんですよ。」
「…っぷ!……あはははは!!!!」
「い、臨也さん?」
「ごめん、ごめん。何でもないよ。…………そっかあ。帝人君を強くしたのは俺かあ。」
帝人君の優しい所は何一つ変わってない……。
あんな別れ方をした男にまで優しくしてたら駄目じゃないか。
「じゃあ、俺も前に進まなきゃいけないね。帝人君に負けてられないや。」
「そうですよ。いつまでも頭のネジが外れたままじゃいけませんよ。」
「……それはひょっとしなくても俺のことなのかな?」
「あ、分かっちゃいましたか?」
一ヶ月前とは違う関係の自分達。
でもお互い笑っている。
帝人君の瞳には俺がいて、俺の瞳には帝人君がいる。
――――それで十分だ。
「じゃあこれからは甘楽~太郎さんと熱い友情築いちゃお☆あんな化け物が入り込む隙間なんか与えないんですからね!」
「………変わる気ないですよね。前に進むとか嘘ですか?嘘なんですね?」
「冗談だよ。………………っははっ!!」
その時視界の角でシズちゃんがこちらを見ている姿が見えて笑えた。単細胞のくせに複雑な顔をしているんだから。
そんな顔する位ならずっと手元に置いとけっての。
あー我慢してる。おそらく帝人君のためを思って俺に手が出せないでいるのだろう。
そうと分かった俺は自然と顔がにやけた。
最後なんだから悪戯したってかまわないだろう。
「ねぇ、帝人君握手しようよ。」
席を立って手を差し出す。
「……え?まぁいいですけど。って、ちょっと!!!」
帝人君の伸ばした手を強引に引き寄せすっぽりと収まる体を抱きしめた。
奴を盗み見ると大いに勘違いしたようで、通りの方へ姿を消していった。
おそらく暴れるのも時間の問題だ。
「臨也さん!!いい加減にしないと怒りますよ!?」
「こわいこわーい。……じゃあ頑張ってね。あの馬鹿もうすぐ暴れ出すから。」
「はい??」
キョトンとしている帝人君の体を離した後、強引に代金を渡してカフェから出た。
次に奴と会う時が楽しみだ。
俺は、奴の消えていった逆方向に上機嫌でスキップした。
後ろでは盛大な破壊音が響き、自販機が宙を舞っていた。
作品名:Distorted Love 8 作家名:ゴルベーザ