沈黙のフィーヴリス
0.570997
自分のことで精一杯で、他人が何を考えてるのか知ろうともしない。
きっと誰もがそうなのだ。
いつもの悪寒と震え。脳内をひっくり返される凶悪な感覚。何度繰り返しても拭えない失敗への恐怖。前の自分が今の自分と同じなのかどうかの不安……これまで見てきたことへの怒り。これから為すことへの、罪の意識。
「? 急に黙りこんでどうしたの岡部。」
Dメールによる過去改編後の、意識のみの過去移動は成功したはずだった。
今日は8月11日。この世界では秋葉原は萌えの街であり、ルカ子は男であり……8月17日にみっともない声でまゆりの死を報告してきた我が助手、牧瀬紅莉栖がいぶかしげに俺を見ている。
「……大丈夫か」
つい、口を滑らせてしまう。
「大丈夫って何がよ」
そこにはさっきの電話越しの慟哭の気配もない。この世界ではまだ起きていないのだから当たり前なのだが。彼女が泣くのは……俺が彼女を泣かせたのは17日の20時くらいとさっき判明したばかりなのだから。
ここはラボ、未来ガジェット研究所。2人きりの部屋の中、返事しない俺の顔をきらきらとした紅莉栖の目が覗きこむ。俺は立ち上がり、彼女の肩を掴み、
「聞いてくれ。俺は……」
ぐらりと視界が揺れる。あれ。
「えっ、ちょっ、岡部!?」
あれ、手の力も腕の力も、はい、ら、ない。なんだこれ。そんな過去は、俺は、知らない……。
たぶん俺は、そのまま紅莉栖に向かって倒れこんでしまったと思う。記憶は途切れる。
自分のことで精一杯で、他人が何を考えてるのか知ろうともしない。
きっと誰もがそうなのだ。
いつもの悪寒と震え。脳内をひっくり返される凶悪な感覚。何度繰り返しても拭えない失敗への恐怖。前の自分が今の自分と同じなのかどうかの不安……これまで見てきたことへの怒り。これから為すことへの、罪の意識。
「? 急に黙りこんでどうしたの岡部。」
Dメールによる過去改編後の、意識のみの過去移動は成功したはずだった。
今日は8月11日。この世界では秋葉原は萌えの街であり、ルカ子は男であり……8月17日にみっともない声でまゆりの死を報告してきた我が助手、牧瀬紅莉栖がいぶかしげに俺を見ている。
「……大丈夫か」
つい、口を滑らせてしまう。
「大丈夫って何がよ」
そこにはさっきの電話越しの慟哭の気配もない。この世界ではまだ起きていないのだから当たり前なのだが。彼女が泣くのは……俺が彼女を泣かせたのは17日の20時くらいとさっき判明したばかりなのだから。
ここはラボ、未来ガジェット研究所。2人きりの部屋の中、返事しない俺の顔をきらきらとした紅莉栖の目が覗きこむ。俺は立ち上がり、彼女の肩を掴み、
「聞いてくれ。俺は……」
ぐらりと視界が揺れる。あれ。
「えっ、ちょっ、岡部!?」
あれ、手の力も腕の力も、はい、ら、ない。なんだこれ。そんな過去は、俺は、知らない……。
たぶん俺は、そのまま紅莉栖に向かって倒れこんでしまったと思う。記憶は途切れる。