時間を越えて
「なんとなくさ!!」
「は!そうかい」
二人は、キングサイズのベッドに横になる。
そして、アメリカは笑いながら言う。
「君は、いつか誰かの救世主になるんだぞ!あ、いやヒーローか!!」
「なんで、俺が…英雄なんかに」
「へへへ!内緒だぞ!!」
イギリスがアメリカにつられて笑う。
イギリスが目を閉じる。
ねぇ、俺を見つけて愛してやっておくれよ。
幼い俺を。
アメリカは、目を閉じたイギリスに心でそう祈った。
そして、目を閉じた。
満足そうに微笑みながら。
朝、イギリスは目を覚ました。
窓からは、陽光が差し込んでいる。
「?」
イギリスは、寝室を見回す。
だが、誰もいない。
イギリスは、首を傾げる。
「誰かと寝ていたような…」
イギリスは、しばらく考えたが思い出せない。
着替えて、甲板に出る。
そしてジョージに聞く。
「なぁ、俺の部屋に誰か来たか?」
ジョージは、誰も来ていないと告げた。
イギリスは他の者にも、聞くが誰も知らないと言った。
気のせいか。
イギリスは、そう呟いて考えるのをやめた。
見上げた空は、美しいほど澄みきっていた。
「????ここは?」
そこは、俺の部屋だった。
見たことのあるポスターや本に映画のDVD、山積みのゲームソフト。
そして、トニーが入って来た。
「オカエリ、あるふれっど…オモシロカッタ?」
アメリカは、頷く。
「とっても!サイコーだったぞ!!!」
「ヨカッタ」
トニーは、ピョコピョコと腕を振る。
アメリカは、疑問を聞く。
「今は、何時?」
「6ジ、アサ6ジダヨ」
アメリカは、叫んだ。
あまり時間が経っていない。
夜12時ごろにタイム・トラベルしたのだから、あれから6時間。
だが、アメリカは思い出す。
昔の彼を見れた。
そのことにトニーに礼を言う。
「ありがとう、トニー」
「イインダヨ」
「さぁ!もう一回寝よう!!!」
アメリカは、溌剌と言い放った。
「オヤスミ」
トニーは、平然とそう言って、テコテコと寝室に戻っていった。
「…なぁ、アメリカ…ちょっとこっち来い」
イギリスがそう言って手招きする。
何事だ、アメリカは言われたとおり近づく。
そして次の瞬間、鼻と鼻が触れ合う距離までイギリスに顎を掴まれる。
「なんだい?」
「気のせいか…」
「??」
「ん?…あぁ、いやな…昔、お前そっくりの男に励まされた思い出があるんだよ」
イギリスが笑う。
アメリカは、へぇと言う。
そして、笑うと明るく言い放つ。
「気のせいじゃないかい?」
「そうだろうな…」
イギリスは、微笑む。
その笑みにアメリカは、見惚れてしまった。
のは、心の内にしまっておこうと思っのだった。
「君は、元ヤンだろ?なら、船や船員はどうなったんだい?」
それは、知りたくなったから。
触れ合ったみんなの行く末を。
聞いたのだ。
イギリスは、寂しそうに笑う。
「船はボトルシップの模型だけ、沈んだ…もう、皆安息を得たからな」
「え?」
「本国に戻って、船の模型を作ってな…ウンディーネ号は沈めたよ」
「そうかい」
「あと、船員は全員本国の大地を踏んだぞ」
アメリカは、内心ほっとした。
良かった。
皆、余生を穏やかに生きたのであろう。
イギリスが懐かしそうに微笑む。
「…楽しかったな、まぁウンディーネは、眠ったんだ……静かに、安らかに」
「君の事だから、船ボロボロにしたんだろ?」
「馬鹿言え!海賊にとって船は、家だ!!その家をぶち壊すわけがないだろうが!!!」
「はーいはーい!分かりました~、元ヤン紳士さん」
アメリカは、笑いながら走り出す。
「待ちやがれ!!」
イギリスは、それを追いかけた。
風が優しく吹いている。
ココは、新大陸アメリカ。
草原には、男が座っていた。
男のその腕の中には、小さな少年。
少年は安心したように眠り、男はその光景に微笑む。
男の名は、アーサー・カークランド。
またの名をグレートブリテン及び北部アイルランド連合王国。
イギリスである。
かつて青い悪魔と恐れられた彼は、今小さな光を抱いている。
誰も愛せないと嘆いた彼は、今腕の中の光を愛していた。
少年が目を開ける。
そして、イギリスが声を掛ける。
「おはよう、アルフレッド」
空は澄み渡っている。
<END>