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toccata

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「そうかーだよねー。…参ったな…」

彼は、現場に早く到着しているタイプだった。
今回はそれが悪い方向に働いているようだ。
今日は、彼にはマネージャーが付いていない。
後から合流する形になっていた。
トキヤはHAYATO時代がある為、多少一人で任せても問題はない、と事務所側の判断だった。

「---どうかしましたか?---」
「あのさ、現場変更連絡が今来てさ」
「---そうですか?で、どちらですか?---」
「森の公園前。逆方向何だよ、そこからだと…」
「---1時間あれば間に合います、移動します。詳細、メールで貰えますか?---」
「分かった、FAXをデータにしてから送るけど…みられるのか?」
「---スマホなので確認できます、問題ありません---」
「助かったー、ありがとう。直ぐ作業する。申し訳ないがトキヤ、移動してくれ」
「---はい。マネージャーには?---」
「そっちにデータ送ってから、事務所から連絡するから問題ない」
「---よろしくお願いします。では---」

やばいやばい、と言いながらコピー機に走りFAXをPDF化。
即トキヤに送信。
そして、ほぼ同時に合流するマネージャーに連絡する。
電話の向こうでは「当日、しかも時間迫って今連絡とか、うわーありえねー」と嘆きの声が聞こえる。
向こうもどうやら合流時間が遅れるようなのだ。

「悪いー、こちらからも連絡してきた所に突っ込み入れておくわ!」
「頼むよー。トキヤには、これ切ったら直接こっちから連絡するよ」
「了解」

電話を切ると直ぐまた電話が鳴った。
今度はトラブルではありませんように、と心で小さく呟きながら又電話を取る。

「はい、シャイニング事務所でございます」


■□■□■□■□■


15時45分。

「お届けものですー」

宅急便のお兄さんがやってきた。
サインをして届いた段ボールを確認する。

「何?」
「この前のDTMな雑誌の」
「あーあのグラビア、ね」
「グラビアじゃないですよ、表紙です表紙」

はは、と笑いながら段ボールのガムテープをはがしていく。
中には5冊入っていた。
表紙には、聖川と神宮寺が最新のPCの前でマイク・サックスを持ちながら「どうすればいいんだっけ?」「こうするんだ」と言うやり取りが見えるような表情で映っていた。

「見本にしても、映ってるのはマサトとレンの2名だろ?」
「本人たちに渡すとして、残り3冊…どうしましょうね」
「あれは?シャイニング事務所企画のイベントの」
「あー景品ですね」
「一人一冊にサインさせればいい」
「うわ、安上がりすぎる…怒られませんかね?」
「……社長と…日向さんにかけ合うか?」

提案した側も、自分で言ったのに自信がなくなった。
派手さ、華やかさが最大の売りだ。
夢を売るアイドルならば、そうであるべきなのだ。
確かに”しょぼい”や”貧乏くさい”はこの事務所にはないカラーだ、と提案した側は思った。

「うーっす、ぉはようっす」
「あ…」「…」

突然事務所にやってきた約1名を除いて…。


■□■□■□■□■


16時。

「おはやっぷー」
「あ、林檎さん、おはようございます。今日もお綺麗ですね」
「うふふ、照れちゃうわー、ありがとう〜」

顔に手をつけて、照れた”恰好”を見せる。
女装アイドルの月宮林檎が事務所にやってきた。

「打ち合わせはどうでした?」
「うーん、一寸は進んでくれたかなぁ。個人的にはもう少し早く進んでくれると生徒たちに注力できるんだけど」
「いや、林檎さん…一応林檎さんもアイドルですし、学園内では先生とはいえどもそれが本職じゃないですから」
「ぶー、分かってるわよー。だって、又去年みたいに人材豊作かも!って思うと…ね、楽しいじゃない?」
「そうですけど…。ふふ、林檎さん、完全に思考回路が先生じゃないですか」
「若いって良いのよー、肌もぴちぴちしてるし。一緒にいるだけで心が晴れやかになって若くなるのよねー。あ、勿論あたしも若いんだけど」
「はは…」

途中の月宮の訂正は上手くスルーしたいと受けて側は思っていた。
笑ってごまかすしかない、こう言う場合は、と。

「そうそう、一応打ち合わせで出てきた案ね」

肩から掛けたいた鞄からファイルを取り出す。
中身は、A4の紙が15枚ほど。
内7枚は文字の紙。
残りは、絵と写真で構成されているものだった。

「一寸イメージと違うのよねぇ。こっちらかのイメージを正確にやって貰おうとするには一寸今のスタッフだと意思疎通がねぇ…。でもまぁ、今から変更する訳にも行かないし、これで何とかやり抜いてみるわ」
「どの辺りが合いませんか?」
「うーん、ここと、ここと…後ここ?…って言うのが譲歩してる感じでの意見」

考えながら月宮は指をさし、
月宮は、2週間後に迫った「女装アイドル達のファッションショー&コンサート」企画のプロデュースをしていた。
最初は「冠だけ」と言う話だったのだが、月宮が

「名義貸しは駄目。あたしとあたしの名前が商品なんだから、出来るだけあたしのやりたいようにやらせて頂戴」

と言い出し、現在追い込みなのだ。
月宮がイメージと違うと指差した所は、主に「物販」「衣装」「楽曲」だった。

「今回はあたしみたいなタイプだけじゃなくて、綺麗なイケメン俳優もキャスティングされているんでしょ?それなのに、その子の持ち歌歌わせないなんておかしいわよ。ファンは、その人のファンなんだから」
「…ですよね…」
「それに衣装。テーマカラーが有るのは分かるけれど、この色似合わない子もいるでしょ?何で無理に着せようとするのかしら、分からないわ」
「…そうですね…」
「それにそれに、物販!!デザイン見たけれど、もう何あれ!?ってくらいセンスがないのよー!確かに、あたし自身はグッズに対しては最初から口出してないし、もう時間的に無理だって分かってるけど!でも何とかしたいと思うじゃない!?」

段々怒りが表に出てきたのか、声が大きくなって行く。

「…グッズは、あのアパレルメーカーが独占的にやってますから…こちらからはどうも言えないんです…諦めて下さい」

と必死になだめた。

「はーい、スポンサー様は神様でーす」

月宮自身も熱くなった事を感じまずいと判断したのか、おどけながら答えた。

「こちらからも、相手にお伝えします。林檎さんの名前…出さない方が良いですよね?」
「ん?出しても構わないわよ、だって、あたしの名前が冠無理だもの」
「…わかりました」
「よろしく頼むわね。有る程度数がないといけないとか…民主主義なのは構わないけれどファンが求めていないものとか…質が落とされるのは困るわぁ」

ふぅ、と小さく溜息をついて、月宮は事務所を後にした。
月宮自身の言いたい事も分かる、とその背中を見送りながら受けては思っていた。
一秒でも早く決めなければならない。
受話器をとって製作会社へ電話をする事にした。


■□■□■□■□■


17時31分。

バイク便のお兄さんが到着した。

「じゃ、よろしくお願いしますー!」

「楽器が上手い王決定戦・アイドル編」への出演する者に関するプロフィールシートが選び終わったのだ。
作品名:toccata 作家名:くぼくろ