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メリー・メリー・ゴーラウンド

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じっと見る。
 隣に立つバカ兄貴。
 ちっこい。ちまっこい。どうしてここまで似ていないのか。
 ……いやいやこれは無理だろう。
 いやだがしかしっ!!……うぅぅ……。
「……どーしたー?たいじー?」
「……なんでもない」
「でも……」
「な ん で も な い」
「……う~」
 ……拗ねた様に上目遣いと唸り声。
 くっ……このバカ兄貴がっ……。
「……試すぞ、兄貴」
「?なにをだー?」
「……出来るかどうかをだ」
「??」
 訳の解っていない、間抜け面をしている兄貴を引っ張って、部屋へと戻る。
 ……途中で誰にも会わなかったのは幸運だった。
 勢いでここまできてしまった感があるが、もう無視だ。
 邪魔の入らない内に突き進む!!
「たいじ~?れんしゅーしないと……」
 ベッドに座らせた兄貴が首を傾げながら言ってくるが、それを聞く訳にはいかない。
「それは後だ。……兄貴、ちょっと目、つぶってろ」
「?うん」
 兄貴が素直に目を閉じる。
 そんなに力入れて目ェつぶって、痛くねーのかバカ兄貴。
 ……そのバカ兄貴に何しよーとしてんだ俺は。
 理性と呼ばれるものなのか、自分の冷静な部分が頭のどこかで問い掛けてくる。が、止める気は無い。
 今更だ。
 兄貴の身体の横に手をついて、距離を近付ける。
 ベッドがギシリと鳴り、兄貴が微かに反応するが、気にしない。
 幼い顔が近付く。……犯罪者の気分がしてきたが、無視だ、無視。
「……んんっ?」
 口を塞がれた感触に驚いたのか、びくっ、と震えて硬直する。
 それでも目は閉じられたまま、抵抗も無し。そのまま唇を舐め上げれば、反射的にか力一杯に握り込まれた両手が震える。
 ……いいのか、これは。
 兄貴、初めてだよな?……しかし、このままだと矢島さん辺りに喰われそーだしそんな事になるくらいならいっそ…………

   コンコン

 …………誰だぁぁぁ!!
 ドアがノックされ、次いで声。
「太一、いるか?」
「っ…………あ、や、やじま、さん?」
 …………目ェ開けやがったなバカ兄貴。
 顔物凄ぇ赤くなってるが、これは力入れまくってたせいか。
「今、出てこれるか?」
「え?んと、えーと……」
 俺の様子を窺う兄貴。
 ……仕方無い。
「…………大丈夫です。今、"二人で"行きます」
ドア越しに声を返す。
「…………そうか。俺は太一のコーチだから、太一がいればいいんだが」
 …………アンタ別に兄貴の専属コーチじゃないだろ。実際そんな感じになってやがるが。
「いいえ。俺も行きますから」
「……そうか。解った」
 何だかおろおろしてる兄貴を促して、外に出る。
 ……矢島さんと目が合った時、火花が散った様な気がしたのは……気のせいでは、ないのだろう。