夢の逆流
「た、たいじ~?」
太一は困っていた。
こんな事は初めてで、何よりもまず困惑が先に立つ。
いや、感情としてはこの上無く嬉しいし、自分の顔が赤くなっているのも解る位に浮かれた気分ではあるのだが。
「…う~」
先程から唸りながら、自分をぎゅう~っと抱き締めている弟の様子が気に掛かる。
どう見てもいつもの泰二ではないし、こちらが何を言っても反応しないし。
「た、たいじ~…どーしたー?どっか痛いのかー?」
「……う~」
自分をすっぽりと覆い隠す様に抱き締める弟の脇辺りからなんとか腕を出して、背中を撫でながら声を掛ける。
唸り声と、一層腕の力が強くなるといった反応が返ってきた。
「たいじ~…」
苦しいが、離れたいとも思えなくて、太一は泰二の名前を呼ぶ事しか出来ない。
「……あにきは」
「ん?」
「……兄貴は、俺だけの兄貴なんだからな……!!」
小さく、しかし強く。吐き出す様に出た泰二の台詞に、太一は目を瞬かせた後。
「お、おー!!おれは、泰二だけの兄貴だぞー!!」
そう叫んだ。
泰二はふっ、と口元を緩ませて、
「……そういう意味じゃねぇよ……バカ兄貴……」
「へ?」
そう呟いた後、脱力し。
「わー!!たいじーーー!?」
太一の身体からずるずると伝い落ちた。
その後、太一の声に集まってきたアストロズメンバー一同により、熱を出している事が解った泰二は適切な処置と共に休まされ。
「たいじ~……」
その間中、眠る弟の傍らで、熱が下がるまでその手を握りながら心配そうに見守る太一の姿があった。
全快した後。
「たいじは、おれだけのおとーとだぞ!!」
「?……ああ」
熱の出ていた最中の記憶はあやふやだったらしく、手をぎゅっと握って力強くそう言ってきた太一の言葉にも、泰二は疑問符を浮かべるだけだった。
それでも、握られた手を眺めながら。
(……何だか気分が良いのは何故だ……?)
……根底にはしっかりと刻まれていたらしい。
太一は困っていた。
こんな事は初めてで、何よりもまず困惑が先に立つ。
いや、感情としてはこの上無く嬉しいし、自分の顔が赤くなっているのも解る位に浮かれた気分ではあるのだが。
「…う~」
先程から唸りながら、自分をぎゅう~っと抱き締めている弟の様子が気に掛かる。
どう見てもいつもの泰二ではないし、こちらが何を言っても反応しないし。
「た、たいじ~…どーしたー?どっか痛いのかー?」
「……う~」
自分をすっぽりと覆い隠す様に抱き締める弟の脇辺りからなんとか腕を出して、背中を撫でながら声を掛ける。
唸り声と、一層腕の力が強くなるといった反応が返ってきた。
「たいじ~…」
苦しいが、離れたいとも思えなくて、太一は泰二の名前を呼ぶ事しか出来ない。
「……あにきは」
「ん?」
「……兄貴は、俺だけの兄貴なんだからな……!!」
小さく、しかし強く。吐き出す様に出た泰二の台詞に、太一は目を瞬かせた後。
「お、おー!!おれは、泰二だけの兄貴だぞー!!」
そう叫んだ。
泰二はふっ、と口元を緩ませて、
「……そういう意味じゃねぇよ……バカ兄貴……」
「へ?」
そう呟いた後、脱力し。
「わー!!たいじーーー!?」
太一の身体からずるずると伝い落ちた。
その後、太一の声に集まってきたアストロズメンバー一同により、熱を出している事が解った泰二は適切な処置と共に休まされ。
「たいじ~……」
その間中、眠る弟の傍らで、熱が下がるまでその手を握りながら心配そうに見守る太一の姿があった。
全快した後。
「たいじは、おれだけのおとーとだぞ!!」
「?……ああ」
熱の出ていた最中の記憶はあやふやだったらしく、手をぎゅっと握って力強くそう言ってきた太一の言葉にも、泰二は疑問符を浮かべるだけだった。
それでも、握られた手を眺めながら。
(……何だか気分が良いのは何故だ……?)
……根底にはしっかりと刻まれていたらしい。