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普通車は四輪、軽だって四輪!

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「………」
「………」
「何とか言えよ、コラァ!」
「…足、震えてるぞ」
「生まれたての仔鹿みたいアル」
「うるせェ!こ、これは、アレだ!ほら!あ、ああ足が痺れたんだよ!」
「今の今まで運転しててか?じゃ、言い訳は署の方でして貰おうか」
「俺がしてどうする!お前だろうが、言い訳するのはァ!ガキ共はバイク持って後から来い! 良いな、乗るなよ!わかったか、コラ!よーし、じゃ、てめーはこっちだ」
がしゃん、と銀時の手に手錠を掛け、沖田の隣に押し込んだ。
「わざわざ手錠掛けるほどでもねェだろ。ちょっと、おい、沖田!狭いんだって。もっとあっち行けよ。 何このポンコツ。大人四人乗ってちゃんと走るのかよ」
銀時のグチを垂れ流しながら、四人を乗せた車はてれてれと走り始めた。


土方は大通りを快調に走らせていた。
今日乗り回している車は、先日まで乗っていたポンコツのミニパトとは全く違う。
排気量も三倍以上はあるだろうか。
真選組副長に相応しいハイクラスの車だ。
そしてもう一つ、今回の車には特徴がある。
あのパトカー的ペイントがされていない。
覆面なのだ。
真選組の制服を着ている人間が運転していて覆面も何もないのだが、それでも土方はこの車を気に入っていた。
かぶき町に入ってしばらく走ったところで、土方は車を停めた。
攘夷浪士の目撃情報があったのは、この辺りのはずだった。
土方は周囲に注意深く目を走らせ、そして車を降りた。
一人の男に目を付け、気配を殺して後をつける。
案の定、その男の行き先には、数人の浪人がたむろしていた――。
「――ふぅ」
発見から数分。
土方は一仕事終えた後の一服を、深く吸い込み吐き出した。
足下には、男たちの死体が転がっている。
「俺だ。あァ。――攘夷浪士なんてもんじゃねェ、ただのごろつきだ。誰か片付けに寄越せ。
あ?あァ、斬ったよ。全員な。場所は――」
ぴ、と携帯を切り、土方はその場を離れた。
元来た道を戻り、周りを見回し、土方は「アレェ?」とつぶやいた。
道を間違えたのかと思った。
しかし、そんなはずはない。
間違いなくここが車を降りた、その場所のはずだ。
だがどこにも、土方の車は見当たらなかった。
土方は、「アレェ?アレェ?」とつぶやきながら、きょろきょろと辺りを見回した。
「ちょっと、あんた」
きょろきょろと不審な動きをしている土方を、お登勢が呼び止めた。
「ここに車停めてたの、あんたかい?」
「あ、ああ、そうだ」
やっぱりここだったのだ。
だがなぜ今、その車は無いのか。
「車は――」
どこにある?と聞こうとした土方に、お登勢の怒声が浴びせられた。
「てめェ、人ん家の真ん前に車放置して行きやがって、ふざけんなよォ、こらァ!! おかげでこちとら二階のバカが大騒ぎして良い迷惑だったっつーの!!」
「お、大騒ぎって――」
「あんたが、奴がバイク停めてるとこの真ん前に車停めやがるから、あの野郎、『バイクが出せねェ!!』って 大騒ぎしやがってねェ。バイク出せないと仕事に行けねェってあんまりうるさいから、悪いけど、車、 レッカー移動させてもらったよ。車庫の前に停めてるあんたが悪いんだ。悪く思わないでおくれよ」
「レ…レッカー移動ォォ!?」
「近くの町奉行所にでもあると思うから、早く取りに行きな。あんなぴかぴかの新車乗り回しておいて、 マナーがなってないったらないねェ、まったく。見た所あんたも警察の人みたいだけど、警察だからってルールを守んなくて 良いってもんじゃないだろう。まず自分たちがルール守って、一般市民に手本ってもんをだねェ…」
お登勢の言葉は、土方の耳には届いていなかった。
消えてしまった車を停めていた場所を呆然と見つめている。
口の中でずっと「ぇ…ちょ…ま…」を繰り返している。
「一応伝えたからね。あんたも風邪引く前に、車取りに行きなよ」
じゃあね、と言うと、お登勢は店の中に戻って行った。
「レッカー…?レッカーって…れ、レッカー?」
誰もいなくなった通りで、一人、土方は「レッカー?」を繰り返していた。