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混迷疑心のコンパートメント

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カー・ブラックホールの間隙をすり抜けて無理やりに記憶だけが過去へと回帰する。タイムリープによって過去の俺へと一方的に記憶を送りつけ、送りつけた瞬間に過去の俺は未来の記憶を持った俺へと意識を変容させる。俺は絶対の観測者。俺の意識が観測したものが現実であり、見ていないあるいはなかったことにした事実は可能性の泡沫として消し去られる。それは無理やりに一方通行の道を逆走するようなもの。いつ事故が起きてもおかしくないような無茶を回数を忘れるほど繰り返し……俺の意識はここにいた。
 脳の痛みと眩暈、よろめきながらとりあえず目の前の個室に入って倒れる前に座りこむ。右手には俺のケータイ、左手には何か入った袋。視力がゆっくりと戻ってくる。どうやらトイレの個室のようだったから、ぐらぐらする頭を押さえながら扉を閉じて鍵をかけた。そのままじっと座っているとゆっくりと痛みと眩暈の記憶が去っていく。今回はタイムリープ酔いがいつもよりひどい。
「……ここはどこだ……?」
 俺の声がちゃんと出た。
 確かに見覚えがあるようで、しかし違和感がある。
 コンクリートの床はとてもきれいとはいえない。壁の作りや消毒の匂いから公衆トイレに思えたが違和感があった。いつも見かけているものに似てはいるのだが、物足りないというかあるべきものがないというか余計なものがあるというか。まさか世界線の移動でトイレの中が変わるとは思ってもみなかった……とぼんやりしていたら誰かがこちらに入ってくる声が黄色い。
「ごめーんちょっと寄っていい? 化粧直したーい」「暑いからすぐ崩れるよねー……ねー、ここ臭くない?」
 2人連れの女子が入ってきたようだった。
 これが噂に聞く痴女? 一瞬思ったが違うと心が叫んだ。あまりに自然な2人の話しぶりに加えて、さっきまで感じていた違和感が暗喩する。個室は妙にきれいでいつもならあれほど山のように描いてある落書きがなかった。見慣れない箱が個室の隅にあるという事実に俺はがくがくと震える。タイムリープすると未来の記憶を持ってくる代償に過去の記憶を失ってしまうので過去の自分に俺は問いたい。どうしてここにいたんだ過去の俺!! 何をしてたんだ過去の俺!!
「あれー誰か入ってる」
 まさか……女子トイレ……だと……!!
 血の気が下がる。
 これまでの時間跳躍の旅路、自分自身の命の危機については慣れてきていたが、今回のこの危機はあまりにも斬新すぎて……バタフライ・エフェクトの恐ろしさに背筋が凍った。