【新刊サンプル】キャンディボックス
【照れる君の頬はまるでピーチキャンディのよう】
いま、とても大変な状況になっている。
隣に、かわいいかわいい目に入れても痛くないくらい愛してやまない恋人がいて、そして普段はツンツンというか、素直じゃないそんな相手が、いつの間にかに自分に寄りかかるような状態になっている。
これは、これは、据え膳なんだろうか?いや、ダメだ。前に日が高いうちに襲ったら後で怒られて、一カ月くらい家に近づいてもらえなかったし、会議でも避けられた。
そんなのはいやだ。それにしても夜ならいいのに昼間はなんで嫌なんだろうか…よくわからない。
そんなわけでイギリスは甘えてくるプロイセンにどうしたらいいかわからないままでいるのである。
しかし、そんなことをイギリスが考えているなんて思いもしないプロイセンはイギリスに寄りかかったまま、携帯を弄っている。おそらくブログなどを更新しているのだろう。とてもマメに更新されていて、イギリスの家に来た時は庭の写真などを撮ったりしている。恋人の家にいるのにそんなことしなくてもいいじゃないか、と思わないでもないが、それもまた彼なりの愛情表現だ。お気に入りの場所などに行くと必ず写真を撮る、という習慣ができたのを知ってからは写真を撮ってブログに載せるのを止めたことはない。
それにイギリスも現在やっていることはやりかけの刺繍で、各々好きなことをしているのだから、文句なんて言えない。
とりあえず、寄りかかってきているのだから、ある程度は触っていいものなのだろう、と解釈して腰を抱こうとする。そうすると驚いたような表情を浮かべるプロイセン。
なんだ?何か用か?と言うような視線で見つめられる。
「あ…えーと…」
「なんだ?」
「お前が、寄りかかってくるから、なんだろうなーって思って…つい…」
「え……?」
自分の状態を把握したのか、プロイセンの顔が赤く染まる。
「あー…わるい…重かったよな…」
そそくさと離れようとするプロイセン。そのプロイセンの手首をつかみ、引きとめる。にっこり、と人の良い笑みを浮かべ、イギリスは腕を広げて見せる。
きょとんとして、すぐに顔を真っ赤に染める。そしてきょろきょろとあたりを見回して、こちらをにらみつける。しかし、顔は真っ赤だし、瞳は若干潤んでいるから全然怖くない。
「ほら、おいで?」
おいで、と口では言っているが断ることなんてできないような雰囲気になっている。いや、きっと行かないでそのまま無視したって平気だ。ただ、ちょっと拗ねられるだけ。でも、そんな風に恋人に言われて断ることなんてできるわけもなくて。
だって、こんなに優しい瞳で言われたら拒否なんてできるわけがないのだ。
誰かに言い訳するようにプロイセンはイギリスの膝の上に行き、抱きつく。
「…おまえ、かわいすぎ」
「うっせぇ…俺よりも背小さいくせに」
「でもお前のことこうやって抱きしめるくらいできるぜ?」
「ほっせえくせに…」
「細くてもお前のことベッドまで運べるぜ?」
「運ぶな」
「……」
こうして甘えてくるがベッドになだれ込むのはやはり嫌なようだ。昼間だと顔が見れていいのに、と思うが嫌がるのを無理やり、というのは興奮するけど泣かせるのは本意ではないから諦める。
「じゃあ、どうしてほしいのかな?My Princess?」
「誰がPrinzessinだ」
「俺にとってはお前がたった一人のお姫様だけど」
「……はずかしいやつ」
事実なのだからなにも恥ずかしいことはないのだが、耳まで赤く染めているのがかわいらしくて、これ以上恥ずかしがらせたら溶けそうだから言うのをやめておくことにする。
「な、でろ」
「ん?」
「だから、なでろ…」
どうしてほしいか、ってお前が聞いたんだろう?と言われる。そっぽを向いたままぶっきらぼうに言っても言っていることが可愛い。拗ねてても可愛いと言うのはどういうことなんだろうな、と思いつつもイギリスはプロイセンの頭を撫でる。
「ん…」
「撫でるだけでいいのか?」
まるで絵画に描かれている天使の羽のようにふわふわとした髪を撫でる、そのたびにふわり、と香るシャンプーのにおいに愛しさが膨らむ。
「キス、しろよ…」
望まれたとおりに最初は頬にキスを送り、まぶたに、そして唇に啄ばむようなキスを送る。何度も何度も触れるだけのキスをしてやる。
口付けられるたびにプロイセンは幸せを感じる。こんなにも幸せでいいのだろうか、と不安になるが、視線を合わせればクーヘンよりもずっと甘ったるくとろけた瞳でこちらを見るイギリスが目に入る。
この翡翠石の瞳に見つめられるとそんな不安なんてどこかに吹き飛んでしまう。
「この甘えため」
「お前が甘やかすんだろうが…」
「そりゃ、恋人だし、甘やかしたいんだよ」
抱きしめて撫でてキスをして、とにかくどろっどろにとろけるくらい甘やかしてやりたいのだ。そしてそのポジションを誰かに取られたくない。
「俺だけに甘えろよ」
この恋人は自分と違って社交的だから友達もいるし、家族にも恵まれている。そんな彼が自分を選んで恋人になってくれた、というだかえでも喜ぶべきなのかもしれないが、それだけじゃ足りない。自分だけ、これだけは誰にも譲らない、譲れないポジションがほしいのだ。
「そんなの、当たり前だろ。お前以外に誰に甘えるんだよ」
「いろいろいっぱいいるだろ…」
「…そりゃ、俺様友達いっぱいいるけどな、こんな感じの甘え方すんのは、お前にだけなんだけど…」
わかんねえの?
イギリスは無言のままプロイセンを抱きしめる腕に力を込める。
「これからも、俺だけにしろよ」
「ほかの奴になんて見せられっかよ…こんなん」
「そうだな、お前のかわいいところは俺だけが知ってればいいもんな」
「うっせぇ、俺様はかっこいいんだ。かわいくない」
「はいはい」
「あやすんじゃねえ…」
子供扱いするな、とポコポコと怒りだすプロイセンに今度は唇を重ねるだけのキスではなく深く、交わる口づけを送る。
「んっ…っぁ…」
声を抑えているがこうして口付けられるが好きなプロイセンは抵抗することがほとんどできない。良い声で鳴いてしまえばいいのに、なんて言ったら怒りそうだ。
最初は抵抗していた手もいまではしがみついている。
充分にプロイセンを味わったところで開放してやる。
「ほら、恋人扱いしてやっただろ?」
「っ…ほんと、お前…」
「ん?」
「なんでもない…はずかしいやつ…」
ぽふん、とイギリスに寄りかかっていたがずるずると下に移動し、膝の上に頭を置いた。
「おれさま、ねる…おまえ、枕になれ」
「はいはい」
膝枕状態になって、プロイセンは瞳を閉じる。そのプロイセンのまぶたに口づける。
「おやすみ、ギルベルト」
寝たふりを必死にする姿にくすくすと笑いながらやりかけだった刺繍に手を出す。
こんなある日の午後。
いま、とても大変な状況になっている。
隣に、かわいいかわいい目に入れても痛くないくらい愛してやまない恋人がいて、そして普段はツンツンというか、素直じゃないそんな相手が、いつの間にかに自分に寄りかかるような状態になっている。
これは、これは、据え膳なんだろうか?いや、ダメだ。前に日が高いうちに襲ったら後で怒られて、一カ月くらい家に近づいてもらえなかったし、会議でも避けられた。
そんなのはいやだ。それにしても夜ならいいのに昼間はなんで嫌なんだろうか…よくわからない。
そんなわけでイギリスは甘えてくるプロイセンにどうしたらいいかわからないままでいるのである。
しかし、そんなことをイギリスが考えているなんて思いもしないプロイセンはイギリスに寄りかかったまま、携帯を弄っている。おそらくブログなどを更新しているのだろう。とてもマメに更新されていて、イギリスの家に来た時は庭の写真などを撮ったりしている。恋人の家にいるのにそんなことしなくてもいいじゃないか、と思わないでもないが、それもまた彼なりの愛情表現だ。お気に入りの場所などに行くと必ず写真を撮る、という習慣ができたのを知ってからは写真を撮ってブログに載せるのを止めたことはない。
それにイギリスも現在やっていることはやりかけの刺繍で、各々好きなことをしているのだから、文句なんて言えない。
とりあえず、寄りかかってきているのだから、ある程度は触っていいものなのだろう、と解釈して腰を抱こうとする。そうすると驚いたような表情を浮かべるプロイセン。
なんだ?何か用か?と言うような視線で見つめられる。
「あ…えーと…」
「なんだ?」
「お前が、寄りかかってくるから、なんだろうなーって思って…つい…」
「え……?」
自分の状態を把握したのか、プロイセンの顔が赤く染まる。
「あー…わるい…重かったよな…」
そそくさと離れようとするプロイセン。そのプロイセンの手首をつかみ、引きとめる。にっこり、と人の良い笑みを浮かべ、イギリスは腕を広げて見せる。
きょとんとして、すぐに顔を真っ赤に染める。そしてきょろきょろとあたりを見回して、こちらをにらみつける。しかし、顔は真っ赤だし、瞳は若干潤んでいるから全然怖くない。
「ほら、おいで?」
おいで、と口では言っているが断ることなんてできないような雰囲気になっている。いや、きっと行かないでそのまま無視したって平気だ。ただ、ちょっと拗ねられるだけ。でも、そんな風に恋人に言われて断ることなんてできるわけもなくて。
だって、こんなに優しい瞳で言われたら拒否なんてできるわけがないのだ。
誰かに言い訳するようにプロイセンはイギリスの膝の上に行き、抱きつく。
「…おまえ、かわいすぎ」
「うっせぇ…俺よりも背小さいくせに」
「でもお前のことこうやって抱きしめるくらいできるぜ?」
「ほっせえくせに…」
「細くてもお前のことベッドまで運べるぜ?」
「運ぶな」
「……」
こうして甘えてくるがベッドになだれ込むのはやはり嫌なようだ。昼間だと顔が見れていいのに、と思うが嫌がるのを無理やり、というのは興奮するけど泣かせるのは本意ではないから諦める。
「じゃあ、どうしてほしいのかな?My Princess?」
「誰がPrinzessinだ」
「俺にとってはお前がたった一人のお姫様だけど」
「……はずかしいやつ」
事実なのだからなにも恥ずかしいことはないのだが、耳まで赤く染めているのがかわいらしくて、これ以上恥ずかしがらせたら溶けそうだから言うのをやめておくことにする。
「な、でろ」
「ん?」
「だから、なでろ…」
どうしてほしいか、ってお前が聞いたんだろう?と言われる。そっぽを向いたままぶっきらぼうに言っても言っていることが可愛い。拗ねてても可愛いと言うのはどういうことなんだろうな、と思いつつもイギリスはプロイセンの頭を撫でる。
「ん…」
「撫でるだけでいいのか?」
まるで絵画に描かれている天使の羽のようにふわふわとした髪を撫でる、そのたびにふわり、と香るシャンプーのにおいに愛しさが膨らむ。
「キス、しろよ…」
望まれたとおりに最初は頬にキスを送り、まぶたに、そして唇に啄ばむようなキスを送る。何度も何度も触れるだけのキスをしてやる。
口付けられるたびにプロイセンは幸せを感じる。こんなにも幸せでいいのだろうか、と不安になるが、視線を合わせればクーヘンよりもずっと甘ったるくとろけた瞳でこちらを見るイギリスが目に入る。
この翡翠石の瞳に見つめられるとそんな不安なんてどこかに吹き飛んでしまう。
「この甘えため」
「お前が甘やかすんだろうが…」
「そりゃ、恋人だし、甘やかしたいんだよ」
抱きしめて撫でてキスをして、とにかくどろっどろにとろけるくらい甘やかしてやりたいのだ。そしてそのポジションを誰かに取られたくない。
「俺だけに甘えろよ」
この恋人は自分と違って社交的だから友達もいるし、家族にも恵まれている。そんな彼が自分を選んで恋人になってくれた、というだかえでも喜ぶべきなのかもしれないが、それだけじゃ足りない。自分だけ、これだけは誰にも譲らない、譲れないポジションがほしいのだ。
「そんなの、当たり前だろ。お前以外に誰に甘えるんだよ」
「いろいろいっぱいいるだろ…」
「…そりゃ、俺様友達いっぱいいるけどな、こんな感じの甘え方すんのは、お前にだけなんだけど…」
わかんねえの?
イギリスは無言のままプロイセンを抱きしめる腕に力を込める。
「これからも、俺だけにしろよ」
「ほかの奴になんて見せられっかよ…こんなん」
「そうだな、お前のかわいいところは俺だけが知ってればいいもんな」
「うっせぇ、俺様はかっこいいんだ。かわいくない」
「はいはい」
「あやすんじゃねえ…」
子供扱いするな、とポコポコと怒りだすプロイセンに今度は唇を重ねるだけのキスではなく深く、交わる口づけを送る。
「んっ…っぁ…」
声を抑えているがこうして口付けられるが好きなプロイセンは抵抗することがほとんどできない。良い声で鳴いてしまえばいいのに、なんて言ったら怒りそうだ。
最初は抵抗していた手もいまではしがみついている。
充分にプロイセンを味わったところで開放してやる。
「ほら、恋人扱いしてやっただろ?」
「っ…ほんと、お前…」
「ん?」
「なんでもない…はずかしいやつ…」
ぽふん、とイギリスに寄りかかっていたがずるずると下に移動し、膝の上に頭を置いた。
「おれさま、ねる…おまえ、枕になれ」
「はいはい」
膝枕状態になって、プロイセンは瞳を閉じる。そのプロイセンのまぶたに口づける。
「おやすみ、ギルベルト」
寝たふりを必死にする姿にくすくすと笑いながらやりかけだった刺繍に手を出す。
こんなある日の午後。
作品名:【新刊サンプル】キャンディボックス 作家名:七瀬りおん