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【ヘタリア】兄さんが消えない理由 マリエンブルク城編2-3

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「兄さんが消えない理由」3




「ああ、俺は今、ローマにおる。先にドイツ騎士団のところに寄ってきたんよ。そしたらな、ローマのヨハネ騎士団とこに行け、言われたん。お前は?」
「俺は、ケーニヒスベルクに向かってる。今の名前は、カリーニングラードだけどね。」
「あそこか!ギルちゃんの・・・まあ、故郷みたいなもんやからなあ・・・・。」
「元東プロイセン・・・・・・。騎士団の時も、あいつはこあそこにいた時間が一番長いんだからさ。何か残ってるんじゃないかなって思ってね。」
「そこ、荒れとる聞いとったけど、大丈夫か?フラン。お前、護身術とか、からっきしやろ?」
「んー、大丈夫でしょ。今は昔ほど荒れてないっていうし・・・。まあ、なんとかなるよ。」
「気いつけてな。ほな、俺はヨハネ騎士団とこ行ってくるわ。」
「ああ。ヨハネ騎士団かあ・・・・。パオロ殿・・・・元気かねえ。」
「ああ・・・俺も会うのは何世紀ぶりやろか・・・・。」
「まあ、よろしく伝えといてよ。」
「ああ。んじゃな。また連絡するよって。」
「俺はルーイのとこに電話しとくよ。それじゃ。」


フランシスはカリーニングラードへ。
アントーニョはローマに今も残る聖ヨハネ騎士団へ。

二人は、ギルベルトのために、彼の足跡をたどる旅へと出た。

消えていくギルベルト。
それを黙って受け入れようとしている彼に、悪友として、一言も二言も言いたかったが、当の本人が珍しく大人しくて、しかも覚悟しているようなのだ・・・・・。

ギルベルトが消えてしまったら・・・・・。
ドイツ・・・ルートヴィッヒがどれだけ嘆くのだろう。
立ち直ることすら出来ないかもしれない・・・。

東西に兄弟が分かたれた時、ギルベルトよりも、ルートヴィッヒのほうがダメージが大きかったのだ・・・・・。ルートヴィッヒは分断されていた40年、心の奥底で一度も立ち直ったことなどなかったのかもしれない。
そういうドイツ・ルートヴィッヒの姿を見てきた二人には、今のギルベルトの態度は不可解だった。
しかし、何を言おうと、さらりとかわし、しかも翌日には何を話したかさえ忘れてしまうギルベルト・・・・・・・・。

何かあるはずだ・・・・何かが!
ギルベルトをこの世につなぎとめる何かが!
最初は「国」ですらなく、今はその「国」すら持たないギルベルト。
彼の存在の特殊さが彼を生き延びさせているのなら・・・・!!
友人として何か出来ること、いや、共に歳月を越えてきた「仲間」
として・・・・できることをしたい。

手掛かりの一番は、ドイツ騎士団、そのもの。
ギルベルト派の司教が亡くなってから、彼の異変が起きたのなら、騎士団へ行ってその原因を探るのがまず一番にやることだ。



しかし、フランスであるフランシスに対しても、スペインであるアントーニョに対しても、ドイツ騎士団の対応は冷ややかだった。
それも仕方ない。
ギルベルトが騎士団でなくなったのは、もう500年も前のことなのだ・・・・。
関わりがない、と言われれば、もう引き下がるしかない。

それでも食い下がるアントーニョに、そっと耳打ちしてくれた騎士団の人間がいた。

歴代の騎士団長がひそかに持ち続けている秘密の書物。
教会での祈りの時間に、どこからか響く声・・・・。

騎士団の首脳陣がひた隠す、その声の主は・・・・・。

聖ヨハネ騎士団である存在の「パオロ・マルガット」。
彼パオロこそが、その声の謎を知っているとアントーニョは言われたのだった。
その声はギルベルトとどうかかわっているのか・・・・。
パオロなら本当にその謎を知っているのか・・・・。
わずかでもいい、少しでもギルベルトの存在への手掛かりを探して、悪友二人はそれぞれの地へと飛んだ。





朝、ギルベルトとルートヴィッヒは、いよいよマリエンブルク城の内部調査に行くことになった。

川沿いにそびえる懐かしい城を目にして、ギルベルトは息をのみこむ。

レンガ作りの赤い城。巨大なその姿は今でも堂々としている。
高城がそびえて堅固な城壁がぐるりとまわりを取り囲んでいる。

川にかかった橋を渡る。
木で出来た橋は、昔の姿を思い出させる。

やがて、城門の前にでた。
するどいとがった門の先が頭上にそびえている。
ギルベルトは見上げながら思い出した。
騎士時代にこの門を閉ざし、中に立てこもった。
あの時も、自分はここで死ぬのかと覚悟した・・・・・。

「にいさん・・・・大丈夫か?行くぞ。」

「ああ・・・・・・。」

城は大部分が改装されてはいるものの、レンガ作りと、内部の部屋割りや井戸などの位置は一緒だった。

「ははっ。結構、昔のまんまなのな!もっと変わってるのかと思ってたぜ!」

「ソ連軍に壊されたとこ以外は昔のまんまだしー!レンガ、昔の色とおんなじにするの大変だったんよ。」
「そっか・・・・。なんか・・・・・ありがとうな・・・・修理してくれてよ・・。」

「へーん。今は俺んちの城だし!」

「うっせー!」

「ええと、じゃあ、一番下の隠し部屋みたいなところに行きますから・・・。」

城の長い回廊をぬけていく。

ステンドグラスがはめ込まれた窓が美しい。

「・・・・・・・。」

ギルベルトは無言で見つめる。

ここにかつての仲間と一緒に立って談笑した。
祈りの時間が来ると、みな、一様に黙ってひざまづく。
窓から差し込む光が、職台にあたって反射する。
祈りの声と静かな鐘の音。
川から吹く風の音。
遠くで荷車の音がする。
商人が荷物を運んでいる。
台所からする料理の匂い。

騎士団の城とは言え、領民ともいうべきドイツからの移民も城の周りを取り囲むようにして住んでいた。
城下には街ができ、海への航路が開かれ、商船もにぎやかに川を行き交った。
港にハンザの船が着くたびに、街では市が開かれ、まるでお祭りのような騒ぎになった。
行商人に、吟遊詩人、芸人たちの集団に、ローマからの使者の華やかな行列。
その度に人があふれ、増えていく。

騎士たちが馬に乗り、城から出発する。彼らは定期的に騎士団の拠点となっている街々をめぐっていく。正式に着飾って進んでいく騎士たちを追いかけて歓声を上げる子供たち。
騎士たちは従者をしたがえ、晴れやかな顔で次の任務の地へと赴く。
それを城の塔から見下ろしていたギルベルトは、新しい騎士となるものへの儀式へと呼ばれる。
誇らしげな顔。不安と期待に満ちた若者たち。
騎士団総長と各領地の長たちの静かな歓談。
祈りの声が城内の聖堂に響く。



それらがすべてギルベルトの脳裏によみがえる。
一行が進む先に聖堂が現れた。

ギルベルトは足を止めて、今は崩れ落ちた祭壇を見つめる。

「・・・・すまん・・・・・・ちょっと・・・・。」

苦しそうなギルベルトを見て、トーリスが言った。

「僕たちは先に行って、ライトをつけてますから・・・。ゆっくり来てください。電気のケーブルにそってきて来ればすぐにわかりますから。」

「・・・ああ・・。」

トーリスとフェリクスは先に行った。

ギルベルトは聖堂の中へと入っていく。

「崩れちまってるなあ・・・・。」

「ソ連兵と銃撃戦になったんだな・・・・。銃痕が残ってる。」