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【ヘタリア】兄さんが消えない理由 マリエンブルク城編2-3

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ルートヴィッヒはそっと壁に手をやる。

「銃か・・・・・・。剣で戦ってたんだよな・・・あの頃は・・・。」

「兄さん、クロンベルク大司教が返してくれた剣はどうしたんだ?あれから、俺は見たことがないぞ。」

「ああ、あの剣か・・・・・。大司教・・・・・ヨハンが亡くなった時に、今の騎士団に渡してきた・・・・。」

「兄さん!!どうして・・・せっかく大司教が兄さんに返してくれたのに・・・。」

「俺が・・・・・もってたって痛んじまうだけだろう。あの剣はなあ・・・・・クロンベルクの一族に持っててほしかったんだ・・・・・。でも、今、クロンベルクの血をひくものは騎士団にいないだろ・・・・・・。せめて、俺を「騎士団」として認めてくれる連中に持っていてもらいたかった・・・・・・。あいつらも、俺との間に、なにか・・・絆みたいなものを欲しがってたしな・・・・・。」

(いまじゃ、もう俺を認めてくれる騎士団員も数人になった・・・・・。この絆も消えちまうんだろうな・・・・・俺が消えるのと同時に・・・・。)


祭壇の後ろのがれきの中に、壊れて曲がった金属製の十字架が埋もれている。
ギルベルトは十字架をひっぱりだした。

「これは後から作ったもんだな・・・・。」

十字架をがれきの一番上に据える。

ギルベルトはひざまづくと祈り始めた。

しばらくギルベルトは祈り続けていた。




やがて立ち上がると聖堂を見まわした。

「さあ、行こうか。ヴェスト。」
「ああ、兄さん」

二人はトーリスの言っていた地下に部屋へと向かう。

複雑な造りの城だが、ギルベルトはケーブルには見向きもせず、まっすぐに地下へと向かっている。


(やはり覚えているんだな・・・何百年も前の事なのに・・・。)

ルートヴィッヒは足早に進む兄に遅れまいとする。

「ああ、こっちです。ギルベルト君、ドイツさん。」

トーリスが手招きする。
部屋の中は煌々とライトで照らされていて、階段よりまぶしいほどだ。

「この中に変な十字架と旗があるんですよ。これがどうなってるかわかりますか?」


ギルベルトは、例の目には見えるが、手に取れない十字架入った小さな箱に手をかけてじっと見つめる。

「ヴェスト、ちょっと入口のところに戻って、右の壁のところにある箱をどけてみてくれ。」

「これか兄さん。」
ルートヴィッヒがひょいと散乱している木箱をどけていく。

「ああ。それだ。そのへんの床に小さなでっぱりがあるだろ?」

ルートヴィッヒはライトの向きを変えて石造りの床を照らす。

見落としてしまいそうな小さな突起が床の石の上にでている。

「そのでっぱりを踏んでくれ。」

「これをか。」

ルートヴィッヒがでっぱりを踏むと突然ぎーーーっという音がし始めた。

「ぎゃ!!またなんか変な音してるし!!」


「これ、からくりかなにかですか?この音って歯車が回っているみたいですけど。」

「正解。ここのしかけは歯車だよ。だけど、よく動いたな・・・もうとっくに錆びてるか、壊れてるかと思ったけどな・・・。」

ぎーぎーとなっていた音が突然止んだ。
その瞬間、ガシャリ、と別の方向で音がする。

「ひゃあああ!な、なんだし?!」

「フェリクス。その箱、十字架の箱を持ち上げてみな。」


フェリクスがこわごわ、箱を持ち上げる。

「その箱こっちのライトの下に照らしてみな。」

フェリクスが持ってくる間も十字架はぴくりとも動かない。
「ヴェスト、お前カッターか何か持ってるか?あったら貸してくれ。」

「ああ。」

ルートヴィッヒの渡したダガーナイフを持つと、ギルベルトは箱の上から突き刺した。

「えっ?何してるんです?」

ナイフの歯先を突き立てて出来た穴を広げて、箱を壊していく。

「ああ、壊しちゃったら・・だめなんよ・・!!」

「これは単純な仕掛けだよ。すぐに戻せる。」

ギルベルトは箱の一面を完全に壊して広げた。

「中を見てみな。」

「中・・・?」
箱の内面は鏡のような素材でできている。
十字架が見えなくなった。

「なくなってる・・?十字架が・・・。」

「ここにある。」

ギルベルトが箱を下に向けた。
カランと音を立てて、金属で出来た十字架が落ちてきた。

「え?何処に入ってた?」
「箱の上の裏の部分さ。見えるけど手に触れられないだろ。これは・・。」

「錯覚・・・ですか・・・・。鏡を利用した反射の映像だったんだ・・・。」

「ご名答。いまじゃよくあるだろ。子供だましの単純なトリックさ。」

「ああ・・・だからどこかで見たことがあるような気がしたのか・・・・。トリックアートの展示でこんな感じの箱をみたことがあったんだ・・・。」

「リト、俺よくわからんしー。」
「あのね、この箱の十字架が見える部分には何もないんだ。この箱は内張りが鏡みたいなの出来てて、上の部分に十字架は隠されてる。でもその映像は鏡の反射で下に映ってみえるだけなんだ。」
「要するに、鏡の反射を利用して十字架を見せてるってわけだ。」

「鏡なんて当時あったっけ?」
「あったよ。あんまりきれいに磨かれてなかったけど、これはすごいね。反射の映像まで奇麗に映るくらい磨かれてる。」

「今まで錆びてないのが不思議だな・・・・。ふつうあの頃の鏡なんてすぐに錆びて歪んじまうなんてな。」
「たぶん・・・・・すごく腕のいい職人のものだったんですかね・・・。」

「あ・・・・そういや・・・なんかイタリアの職人だったか・・・枢機卿に献上する品だかなんだか・・・・とか言ってたような・・・・・。」
「なんで枢機卿への献上品がお前のところにあるしー!」
「俺の本拠地はヴェネチアにあった時代もあったんだよ。ローマじゃ法王の私兵にされる危険があったし、ヴェネチアなら、どこにでもすぐに行ける船があったろ?」
「ふーん。そいうや、お前ってあちこち行ってたんだよな。」
「流浪の騎士団とか呼ばれてましたね。」
「それ、俺の黒歴史だからよ!」
「いまは・・あえてつっこみませんよ・・・・・・。」

「まあ、いいさ。謎っていうのが解ければ。さっきのでっぱりはなんだったのか?なにかのスイッチか?」

「ああ、あれな、この箱動かせなかったろ?あれは裏側で鎖かなんかを通してつながってんだ。積んである箱とかはたんなるカモフラージュだよ。スイッチのな。ここらへんを、どけると・・・。」


そういうと、ギルベルトはこのトリックボックスが置いてあった櫃や箱の山を蹴飛ばした。
「ああ、やっぱり動かねえな。昔はここから隠し扉が開いたんだよ。この城からの脱出路の階段にでる。」
ギルベルトは壁を押すが、ぴくりとも動かない。

「俺が押してみよう・・。」

ルートヴィッヒがギルベルトに加勢する。
ぎー、ぎー、っと音を立てて、ゆっくりと壁が動き始めた。
ガタン、と壁が動きを止める。

「あれ?もう動かないね。」
「むこう・・・・なにかつまってる・・。がれきみたいだな。石の山だ。」

「ああ、やっぱりソ連との戦闘でこのあたりも崩れたんですね。」