アストロズ寮食堂にて(矢太+いっぱい)
矢島に抱かれたまま、よく解らない内に、流されるままに浴場へと連れていかれる太一だった。
それらの事態を大口開けて、なんというか物凄い顔して何も出来ず固まっていた他四名。
太一達の姿が見えなくなってから、漸く再起動した。
「………てっ、天然なのかあれはっ!?」
「食われる……兄貴が食われるっ………!!そっ、それならいっそ俺がっ!!」
「しっかりしろ泰二ー!!……ていうかどこまで本気なんだ矢島さんは……」
「………じょーとーじゃねーか………」
「へっ?」
と、一人だけ何やら方向性の違う台詞をぼそりと呟く者が。
思わずそちらの方へと視線を向けると、
「おいらを無視してたいちを食うなんざ許さねーーー!!」
ぶち切れてました、浅見さん。
「おいらもまぜやがれーーーっ!!」
そしてダッシュ。
当然行き先は風呂場だろう。
暫しの間を置き、
「………じゃあ俺も行くか。汗かいたしな」
「ってあんたもう風呂入ったろ!?」
「だから汗かいたからっつったろ」
無表情にそう言いながら、すたすた歩いていく和久井。
「まぁ、二度風呂もいいんじゃないか?…おれはまだ入ってないからフツーに入りに行くけど」
太一の事も心配だしなー、と平田も席を立ち、すたすたと。
「ちょ、平田さんまでっ!?」
ある意味自然な流れだ。平田は保護者ポジションなのだし。
「………………」
後に残るのは無言の泰二。
既に食堂には泰二しか残っていない。…そりゃあ、いちゃこきなんだかほのぼのなんだか、太一と矢島の仲良し(?)っぷり。それ自体はともかくとしても、ナチュラルに殺気飛び交う空間だ。更には、ただでさえ居辛い空気だったというのに、唐突に始まったのはエロ展開というかセクハラ現場というか。
…普通逃げる。
と、泰二がぶるぶる震え出し。
「………どっ、どいつもこいつもぉぉぉーーーっっ!!!」
やおら絶叫し、ダッシュした。
(どいつもこいつも無駄に積極的になりやがって!!兄貴も兄貴だっ!!あれじゃーいつか本当にいつの間にやら食われんぞっ!?……やっぱこれ、兄貴さらって逃げるしかなくないか!?)
…最近よくそんな思考に陥る泰二だが、いろんな意味で無理だろう。
その後。
なんだかんだと出遅れまくりの泰二が見たものは。
いつもと同じくほわほわしている岩田と苦笑している武藤の間で、なんか護られてるっぽい兄の姿だったり。
しかも岩田さんと同じくほわほわしてました。
「……あれだな、ある意味最強は岩田さんだよな……」
洗いっこだとか背中流すだとかは普通にしたらしいが、それ以上のスキンシップは皆無だったと泰二への報告ついでに漏らした平田のその言葉に、一同揃って頷いてましたとさ。
作品名:アストロズ寮食堂にて(矢太+いっぱい) 作家名:柳野 雫