Shadow of HERO 5
大雑把で不安だらけの作戦だったが結果は大成功、店員に2人怪我人がいたが命に別状はなく、犠牲者を一人も出さずに済んだ。
犯人が拘束されていくのを見届けて、バーナビー達は外へと歩き出す。デパートを出ると、ヒーロー達から「来ないと思ったら中にいてびっくりした」や「見えない所での活躍素晴らしい、そして素晴らしい!」等と声が掛かった。皆ヒーロー仲間のバーナビーに声を掛ける中で、ドラゴンキッドが虎徹の方に詰め寄る。
「あなただよね、中で次々と犯人やっつけてたの!僕、監視カメラの映像で見てたよ。ねぇ、今度手合わせして!」
「ヒーローに褒めてもらえるなんて光栄だなー。けどオバサン一般人だし、手合わせは難しいんじゃないか?」
「えーバーナビーに護衛されてるんでしょ?だったら一緒にトレーニングルームに来てくれれば…!」
「ちょっと、無茶言わないでよ。私達はともかくロックバイソン達の顔がバレるでしょ。」
「そうだった……ちぇ、スキルアップになると思ったのに。」
ドラゴンキッドが興味を持つのも分かる。チラッと見ただけだが彼女の動きは型がないのに無駄がなく、とても洗練されたものだった。あの動きはヒーローの誰にも当て嵌まらないものだ。己だって一度手合わせしてほしいと思う。もっとも同性のドラゴンキッドと違って、自分は気を遣って動けなくなりそうだが。
「あの!バーナビーとオバサン!!」
そうしていると上ずり気味の幼い声に話しかけられた。振り返ると小さな少年が緊張した表情で立っていた。
「すっごくかっこよかったよ!ありがとう!!」
頬を赤らめ興奮気味にそう言うと、少年は離れた所にいる母親の元へと戻っていった。
「………」
「……?」
虎徹は喜ぶことも照れることもなく動かない。あからさまに嬉しそうな反応をしそうなのにどうしたのかと彼女を見ると、静かな微笑みが目に入った。
「ありがとう、か…。やっぱいいな、こういうの。」
「――――」
その笑みがとても綺麗で、思わず見入る。
同時に1つの疑問がはっきりと形を持って生まれた。
(この人は何者なんだろう。)
とっさに音楽プレーヤーを着けておいた機転、状況への洞察力やドラゴンキッドも興味を持つ戦闘力、彼女は一般人とはかけ離れ過ぎている。それにあの時計に仕込んだワイヤー、普通あんなものを持っているわけがない。時折見せる意外性といい虎徹には何か…裏がある様な気がしてならない。こんな理想主義者どうでもいいと思っていた、思おうとしていた。けれどバーナビーの中には、打ち消せないぐらい彼女への関心が強まっていた。
作品名:Shadow of HERO 5 作家名:クラウン