Shadow of HERO 5
「もちろん策はある、こっそりヒーロー数名に店員の救出に向かってもらって、同時に俺達が周りの犯人取っちめる!」
「………それだけですか?」
「おう!」
ここにきてバーナビーは一気に眩暈を覚えた。犯人との計画に対する推測は見事なものなのに解決策が安直すぎる。「俺達」と言う辺り自分も戦力に入れていて、だから大丈夫だと言いたいのだろうが、バーナビーから言わせれば彼女はNEXTでも一般人なわけだし戦力としてアテにはできない。複数のNEXTを相手するには心元なさすぎる。
「こっちにもヒーローを充ててもらって…」
「店員救助に向かうヒーローはテレビに映せない。こっちにも充てたら人数が減って不審に思われるぜ。」
やるしかないというのか、実質一人の戦力で。
「……分かりました。」
あまり時間はないのだし、迷うだけ無駄だ。
バーナビーは諦めてPDAを虎徹に起動してもらい、アニエスに連絡を取った。
『…分かったわ、合図をしたら動きなさい。それと護衛中の彼女だけど、それなりに動けるから気にしなくていいわよ。』
「知ってるんですか?」
『まぁね。―――ドラゴンキッドとロックバイソンが到着したわ。行くわよ、3・2・1』
虎徹に目配せする。アニエスの声に合わせて指でカウントダウンを始め、気付かれないようこっそりと腰を上げた。
『GO!!』
スタートダッシュと共に能力を発動し、縄を切る。青白い光に驚いた犯人が身構える前に、一人を蹴り上げ近くにいた別の犯人にぶつけた。
「こいつ、バーナビーじゃねぇか!」
「な…ぐぁつ!!」
犯人に喋らせる暇は与えない、状況を把握して能力を使われる前にある程度倒さなければならないのだから。チラリと虎徹の方を見ると、彼女も青白い光を纏って次々と犯人をのしていた。その動きには無駄がなく、とても素人とは思えない。
「くそっ…!裏切り者め、お前達がいるからNEXTが虐げられんだよ…!」
男が叫ぶと同時に、ものすごい風圧が己にかかる。ハンドレットパワーで筋力が100倍になっているのに、踏ん張るのがやっとだ。
「だからって関係ない人を傷付けていいわけないだ、ろ!!」
男の背後から虎徹がタックルを喰らわせた。前方からの風圧がなくなる。
「声で空気圧を作るNEXTってとこか?ったく…」
男が気絶しているのを確認するその背後で、倒れていた犯人の一人がゆらりと起き上がった。彼女に殴りかかろうとするのを、バーナビーが飛び蹴りで阻止する。
「やるねーバニーちゃん。」
「僕の名前はバーナビーです。」
残る犯人はあと一人。男はワナワナと震え、信じられないものを見る目でこちらを見ている。
今大体4分ぐらいだろうか、もう時間がない。
「な…舐めんなぁ!!」
男の身体が青白く光る。すると、体が一気に重くなった。周りの物もメキメキと軋みをあげ、人質達も苦しそうにしている。
「俺は重力を操れるんだ、どうだ苦しいだろぉ…!」
「くっ…!」
「これ、ぐらい…!」
虎徹がなんとか拳を振り上げたが、軽く避けられ逆に殴り返されてしまった。重力を操れるなら攻撃はさぞ威力があるだろう。もう彼女の助けは期待できない。
「お前も死ね!」
「っ……!」
次は己に拳がむかう。なんとか一発目は避けたものの、すぐに2発目はきていた。まずい、と本能的に感じたが―――その攻撃を受けることはなかった。
男が惨めに顔面から倒れる。その足には、ワイヤー。
「油断禁物、ってな。」
ワイヤーは虎徹の腕時計から伸びていた。殴り飛ばされたダメージで起き上がることはできないようだが、なんとかワイヤーを引っ掛けることには成功したようだ。
男の気が散ったことで能力が解除される。バーナビーは男に向かった踵落としを決めた―――…
作品名:Shadow of HERO 5 作家名:クラウン