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【腐】貴方と君と、ときどきうさぎ その7【臨帝】

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と言って素直に答えてくれるはずはない。
「意外と冷静なんだな」
「ええ、初めての経験ではないので」
恐怖心がないわけではない。はっきり言って怖い
感情はある。しかし悲しい事に幾度となく経験済みなのだ。
この手の誘拐は。理由はもちろんこの体質のせい。
表だって秘密がばれぬよう僕等一族は生きてきたが
情報がどこから漏れたのか、嗅ぎ付けてきたのか僕には
詳しい理由は明かされなかったが幼い頃何度か誘拐された。
悲しい事に竜ヶ峰の家系の者に利用されそうになり誘拐された事もある。
「手荒なまねをして申し訳なかったね。だが君の返答次第では
今日からここが君の生活スペースになるよ」
「こんな事をしてただで済むと思っているんですか?」
「なに、我々は君に協力をしてもらいたいだけさ」
男は優しく語りかけてくる。
「さあ、話をしよう」
僕は、黙って男の言葉に耳を傾けた。


***


池袋駅東口駅前


「臨也さん!」
終電間際、急いで駅内に入ろうとしていた所珍しい場所で帝人君と会った。
駅の中へ入っていく人々の流れの中に彼は紛れていたがまだ制服姿だ。
「なにしてんのこんな時間に」
訝しむのも当然だ。普段、帝人君はこんなところをこんな時間に
出歩いたりはしない。
「今日は少し親戚の家に行っていたので遅くなってしまったんです。
そうしたら、臨也さんの姿が見えて…」
「帝人君」
「はい?」
「感心しないな、こんな時間まで出歩いているなんて」
「心配してくれるんですか?」
「当たり前でしょ」
俺は少し呆れて小さく息を漏らした。
「まさかこれから歩いて帰るつもり?」
「はい」
「何かあったらどうするの!」
「僕男ですよ?」
何を想像しているんですかって君はくすくすと笑った。
いや、俺からしてみれば帝人君が一人で街を歩いてたら
間違いなく声を掛けて連れ去るんだけど。
「あのね、帝人君」
「わかっていますよ臨也さんの言いたい事は」
池袋の表通りは夜でも割と賑やかだが柄の悪い連中も多い。
住宅街に入れば景色は一変し人通りなどない
暗闇の中に放り込まれる。万が一何かあってからでは遅い。
「ふふ、大丈夫です。それに何かあっても今日は
臨也さんが守ってくれますから」
「俺忙しいんだけど」
「恋人を放っておけるんですか?」
「君も言うようになったよね」
「はい。という訳で臨也さん今日は僕と一緒に居て下さい」
断る理由などない。勿論行先は帝人君のアパートだ。俺と帝人君は
駅を出るとちょうど青になっていた目の前の横断歩道を渡り始めた。
「っ!」
右手に、温かな人の温もりを感じた。手が、指が絡んでくる。
この暗がりではよくわからないが恐らくほんのりと顔を赤らめて
いるに違いない。帝人君は俺を見ようとはしなかった。
どうした事だ、帝人君が積極的だ。外では必要以上の
スキンシップは嫌がるくせに。
「会えて、嬉しいです」
帝人君の弾む声にドキリと心臓が脈打った。はっとして彼に
熱い視線を送っているというのに帝人君は俺の顔を見ようとはしない。
彼は時々照れ隠しなのか俺と視線を合わせようとしない癖がある。
強引に目を合わせて押し倒したら顔を真っ赤になって怒る姿も可愛くて好きなんだけど。
「そういえば妹さん達はその後どうなったんですか?」
「今ね君の買い取り人を脅してる所」
わざと大げさに言ってやったら帝人君はぎょっとした。
本当は交渉中。新羅の親父め、なかなか諦めが悪い。
たかがうさぎ。珍しいから欲しいの一点張りでそれ以上は
口を割らない。……ま、他にも思う所はあるけれど。
「大丈夫。帝人君は何も心配する事はないよ。もうすぐ終わる」
「…臨也さん、僕は、臨也さんを信じます」
「うん、ありがとう」
繋がれていた手に力が篭る。賑やかな繁華街を避けて人通りのない住宅街へ
足を踏み入れた途端帝人君がぎゅう、と俺の腕にしがみついてきた。
「何、今日は随分甘えん坊だね」
「僕にだって、そういう気分の時あります」
「俺は365日24時間大歓迎だけど」
帝人君の細い腰を引きよせてちゅ、と頬にキスを落とす。
「…、キス、できればいいのに」
「したい?」
「はい。がっつりと。臨也さんを味わいたいです」
なんて、俺の胸に頭を預けたまま言うものだから
俺は唇にキスを落とせない代わりに首筋に噛みついた。
「…!」
帝人君の体がビクリと震えたが抵抗はない。俺の背に
手が回り、ぎゅ、とコートを掴まれる感覚がした。唇を離し
舌で赤くなっている場所を舐めて、わざとリップ音をたてる。
静寂に包まれた街の中でその音は驚くほど辺りに響いた。
「あ、あの、流石にやりすぎ、なんです、け、ど」
「仕掛けてきたのは君だろう?」
「…う、うう…」
「続きは、君のアパートで」と、耳元で囁けば
彼は小さく、頷いた。

帝人君から消毒液の匂いがした事は、黙っておこうと思った。