真選組のホワイトデー
まぁ、後は各メディアへの露出具合も関係しているんだろうけど、一番多いはずの局長がこの有様なのでそれは敗者の言い訳程度にしかならないんだろう。取材とかでは局長副長ぐらいしか取り上げられないけど、沖田さんはまた別だ。違った意味でよく取り上げられている。店舗や民家半壊とか、そんな沖田さんらしい華々しい記事では、実名と写真入りで掲載されたりしている。沖田さんの機嫌の良い時は、その写真でピースをしていたりするのだ、不謹慎極まりない。
それでも、黙っていれば涼やかで異国のお伽噺に出てくるような王子様然とした容姿は、女の子にウケが良いらしく、通常でもファンレターが届いたりしている。当然、その辺りも副長検閲という事実の前に本人の元へと届くこともないのだけれど。
局長と並んで実はお祭り好きな沖田さんだけど、この騒ぎにはさほど興味はないらしい。この件についてコメントしているのをそう言えば見たことがないなと思う。
そんな沖田さんの青いグラフは皆がいぶかしむ程少ない。今年は暴れっぷりも凄かったので、さぞや青グラフの伸びがいいだろうというのが大方の予想だったのだけど。普通に赤いグラフが青を上回っているのは沖田さんぐらいだ。
副長の方が量は多いけど、青も多いので沖田さんの勝ちという所なんだろう。結果が、賭けに使われているのは知っていたけど、まさか比率で勝負になっているとは。確かに、副長と沖田さん以外は話にならないので、そうなってくるんだろう。
そして、俺は皆が副長と沖田さんの結果に夢中になっている隙にそーっと抜け出した。この採点方法を取ると影の薄い、でもたまにお礼なんかを言われちゃう位置にいる奴。そういう奴はうっかりとプラスになってしまったりするのだ。こんなことで、いじめられたくないじゃないか。
「あーあ、今年は副長もマイナスってことは、けっきょくプラスなの沖田さんだけかー」
「そーだな〜。ん? あ、もう一人プラスがいるぞ! 黒字が埋もれてる!」
「マジで!? あ、ホントだ。+1だけど。誰だよ!」
「え……っと、あ! 山崎!」
「なんだと! てめぇ、山崎コノヤロウ!」
「あっ、いやがらねぇ。さっきまでここにいたのに!」
全員が締め上げてやろうとした時には、俺はすっかり広間から消え失せていた。
2007.3.14
作品名:真選組のホワイトデー 作家名:高梨チナ