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黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~

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「ロゼッタ協会が、比較的穏便であると言ったことがあると思う。だがこれは、支援組織という性質による話だ。実際は、属するハンターの資質によって、探索が穏便なものになるかどうかは決定する。もっとも、個人による探索が主流となるため、いきおい、派手な兵器は使いづらい」
「まぁ、遺跡にもぐりながらヘリを操縦はできんわな、一人で。人をやとうにしても、組織が本気で出してきた金には及ばないってことか」
「そういうことだ。レリックドーンの方は、全く逆だ」
「暴れる時は派手だが、ハンター個人の暴走は少ない、と」
「取引相手としては、実はレリックドーンの方が楽だな。ロゼッタ協会は、ハンター個人と取引をしてほしいという意向を見せている。できれば勘弁してほしいところなのだが――」
 言葉を切り、如月は苦笑を浮かべる。
「今回の取引が成立すれば、ハンター個人との取引を開始することになる。どこまでハンターの数を限れるかがカギだが……正直きついな」
「飛水の里から手伝いをよこしてもらうっつーわけにゃあいかないのか?」
「骨董屋は所詮副業だからな」
「大変な副業もあったもんだ。……っと。アンタの商売はおいといて。敵に回すと厄介だな。この平和ボケニッポン大都会東京でそうそう派手な兵器を使うとも思えんが」
「忘れたか? 村雨。天香には――物理結界がある――。彼らの隠密行動能力がどれほどのものかは不明だが、侵入さえできてしまえば中の騒ぎは、おそらく外には漏れない」
 如月の言葉に、村雨は天を仰いで嘆息した。そして、テーブルの上の煙草の箱をひきよせ、指先で何度もはじく。
「壊せ」
 一本取り出したところで、きっぱりと言った。
「全く。是非そうしたい」
 ため息をつき、如月もまた大きく頷く。
「壊せ、んな学校気取りの《呪われた場所》なんざ全部すっきりさせて、秘宝でも何でもゆっくり探せ。バミューダトライアングル壊すよか断然楽だ」
 煙草に火をつけ、ゆっくりと吸い込み、煙を吐き出す。
「俺とアンタ、御門と十二神将。念のため四神の連中でも加えりゃ、専門外っつったって、いけるだろ。あとは、ユンボにダンプ、ツルハシからスコップまでたっぷり動員して大捜索だ。マリーセレスト号の船員を探すよか、うまくいくさ。……っと、悪ぃ」
 無意識のうちにつけていた煙草に視線を移し、それから如月を見る。我に返った表情で、村雨は頭を下げた。
「いや。だが、僕も困るが、それ以上に秋月がM+M(エムツー)機関と敵対するわけにはいかんだろう」
 短い否定の言葉の後、如月は村雨が持つ煙草の箱に手を伸ばした。
「珍しいな。――ああ、もちろん冗談だ。しっかし、M+M(エムツー)機関も動いてやがるとは。マジもんだな」
 村雨から受け取った煙草を咥え、差し出されたライターの火に顔を近づける。深く息を吸い、吐き出す。ついでに小さく咳き込んだ。
 そして、眉を寄せながら、ソファに背を預ける。
「潜入済みの後ろの「?」を決定と仮定すると、墓守、《秘宝の夜明け》(レリックドーン)、M+M(エムツー)機関。そして、遺跡そのものが持つ力――知識(テクノロジー)と言うべきか?」
「黄龍甲、ね。さすがセンセイだ。シロウトのクセにいいカンしてやがる」
「何が京也をひきつけた? ――こちらの世界は見たくないのではなかったのか?」
 如月は、自らが吐き出した紫煙を、目を細めて見た。向かいからの薄い煙が絡まり、天井へとゆっくり上る。
「馬鹿が」
 吐き捨てるように言い、乱暴に煙草を消す。
「墓守の情報が少ないな。顔写真まで出てくるたぁ思ってなかったが、複数か? そこまでしかわからねぇ。その複数っつーのも、雑魚がいるのかなんなのか」
「組織とつながりがないとこも真神似だな」
「幽霊の、正体見たり枯れ尾花」
「予測と期待は違う。そっちは、期待のほうだろう?」
「ああ、こればっかりは、悪い方にばっかり考えんなたぁ、いえねぇなぁ」
 大げさに肩をすくめ、村雨は、吸い終わった煙草を丁寧に消した。


「芙蓉の報告とは別に、もう一つ情報(ネタ)がある」
 紙を封筒にしまいながら、村雨は言った。
「――劉が、日本に入っているらしい。それから、蓬莱寺が来週帰国だ」
「何?」
「それだけじゃねぇ。青龍ことアランも来てる。まぁ、こっちに腰を落ち着けるってわけじゃあないらしいが」
 告げる内容と口調に反し、村雨の眉間にしわが刻まれる。
「賑やかでいいことだ。同窓会の知らせでも送るか? と、言いたいところだが……」
「ああ。――呼ばれたか?」
 村雨の言葉に、如月はため息をつき、首を横に振る。
「まだ、わからんな。居所はわかるのか?」
「アランはこっちの親戚のトコだ。蓬莱寺ならそのうちアンタんとこに連絡があるだろ。劉は――わからんな」
「ふむ。しかし、良くわかったな」
「なぁに。もともと、あの事件の関係者は監視対象だ。普段、いちいちデータを確かめることがないだけで、妙な動きがあればすぐに情報は手に入る」
 肩をすくめ、封筒に入れた書類を手の甲で叩く。その様子に、如月は頷いた。
「そういうことか。そうなると逆に劉の居所がわからないのが不自然だな」
「隠れてやがるか、あの野郎」
「何を考えているのか」
 目を細め、口元で両手を組む。眉を寄せる如月に向かって、村雨は軽い調子で手を振った。
「ま、別件っつー可能性もあるがな。今年は、どうやら当たり年だ。真神でも何やら不穏な気配があるらしい」
「真神までか!?」
 さすがの如月の声も、驚きで彩られる。
「あっちは、護人が優秀だ。桜ヶ丘もついてる。こっちほど切羽詰っちゃいねぇさ。それに、OBが山ほどいる。つっても、とりあえず、状況の確認だけは急がせてる。安心しろ」
「――何に呼ばれたか。何が起こりつつあるか。そして――」
 ゆっくりと、如月は数え上げた。
「主役は誰か、か?」
 その言葉の最後を取り、村雨は口元をゆがめた。
「ああ。それと、操り手は」
 如月は、大きく頷いてからうつむいた。
「そもそも、そんなモンが存在するのか否か。見えそうで見えねぇ。きなくせぇ。何がどう絡まってんのか、それともただの偶然か」
「――難儀なことだ」
「ああ。全く」
 如月は目線を上げ、村雨はふりかえる。二人の視線の先には、生き物のように動く東京の夜景が広がっていた。