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黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~

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 歯切れの悪い様子に壬生は微かな笑みを浮かべる。普段から表情のない声が、ほんの少し、暖かなものになった。
「大丈夫です。言えない場合には、その旨お伝えします。そして――ここで聞いたことは、許可がない限りけして他には」
「……ありがとう」
 如月の言葉に、壬生はただ笑みを返した。
「今、どこの任務をやっている?」
「申し訳ありません」
「だろうな。では。――君は、天香学園がらみの任務についていないな?」
 即答されたことを気にする風もなく、すぐに質問を重ねる。続いての問いに、壬生は目を細めた。そして、ゆっくりと頷く。
「如月さん。あなたがそれだけ気にする天香学園とは一体? ……確かに、調べた限りでは、真神旧校舎ほどではないものの、色々ときなくさい報告があがっていましたが」
 如月は目を伏せた。しばらくの後、顔を上げると、まっすぐに壬生と視線を合わせる。
「京也が今、そこにいる。そして――」
「そして?」
「僕は今、天香学園に侵入す(はい)る手段を得るために、ロゼッタ協会と取引の最中だ」
「入れないのですか?」
「ああ。入れない。あの時は黄龍甲を持っていたということもあるが――。実際に今入れるかどうかはともかく、物理結界がある」
「……」
 壬生は目を細めた。
「如月さん。どの程度の情報がありますか?」
「天香学園高等学校の概略。敷地内の《墓》および《墓守》の存在。《生徒会》の常識では考えられない権力。そして――ロゼッタ協会、《秘宝の夜明け》(レリックドーン)、M+M(えむつー)機関の侵入」
 《秘宝の夜明け》(レリックドーン)とM+M(エムツー)の侵入は、おそらくというだけで確認はなされていないことをつけくわえ、如月は言葉を切った。
「《生徒会》が墓を守る組織であることは?」
「特には聞いていない。やはりか」
「はい。天香学園は《墓》を守るためのものです。そして、その役割の中心が、《生徒会》、そして創立者の阿門家の一族です」
 壬生の言葉に、如月は黙って頷いた。
「《墓》が何を祀るものか、そして「守る」とは具体的に何をするのか――つまり、存続か封印かまでは分かりませんでした」
「そうか。ありがとう」
「いえ、お役に立てず。――ところで」
 残っていた茶を飲み干してから、壬生は微かに眉を寄せ、声を低くした。
「汀さんが、内部にいるとは一体、何のために?」
「君と対立するようなら、襟首掴んで引き戻すところだけどね。ロゼッタ協会の宝捜しだそうだ」
「……」
 珍しいほどに、眉間に深いしわが刻まれる。
「ああ、別に大学卒業を機にロゼッタ協会(あそこ)に就職したわけじゃあない。安心していい」
「いえ。それが汀さんの判断ならば。しかし、所属したわけではないとは?」
 如月は深くため息をついた。
「京也の言葉を信じるなら、ね。人違いだそうだ。ああ、そういえば「御子神京也」で侵入しているから、しばらくはメールにしろ電話にしろ「汀禁止」だそうだよ」
「ああ、通りで。人違い?」
 如月は苦笑した。
「聞いた時は、あそことの取引は考えようかと思ったんだが。これからは、所属ハンターとの個人取引にまで手を伸ばす羽目になりそうだ」
「……杜撰な」
 肩をすくめる如月に、壬生は大きくため息をついた。
「今のところは、対立せずにすみそうです。そう、京也さんとは。ところでもう一つ疑問があるのですが」
「なんとなく予想はつくけど、何だい?」
「御子神京也で、ということは、潜入なのですね?」
「ああ。――」
 続けようとしたが、如月は口を閉じた。
「如月さん?」
「「ピチピチ男子高校生きょうやくん」だそうだ」
「……。……ああ、このお茶、美味しいですね。どこでお買いになったんですか?」
「その茶はもらいものだ」
 露骨なまでに話をそらす様子を、如月は面白そうに見守った。
「ああ、そうなんですか。残念ですよ、購入元がわかれば手に入れようかと思ったのですが」
 大きく頷く壬生の前にある空になった湯飲みを引き寄せ、如月はおかわりをいれはじめた。


「鬼道書については、とりあえず来週までに目鼻をつけておこう」
 壬生に頼まれたものを用意し、店先で手渡しながら如月は言った。
「大丈夫ですか?」
 渡されたものを一つ一つ確かめ、頷く。
「あまり手間取ると、天香のほうに差し支える。騒ぎ自体は、片付いているのだろう? それ以前に分かったなら、電話しよう」
「はい。――わかりました。しかし、そんなにも強力な結界があるのですか」
「いや。こっそりとというのが問題なだけだ。黄龍甲はなんとか送り込んだんだが、人一人ともなるとなかなか」
「そうですか……」
「超古代文明系はどうもね。縁のある人間がいないから。壬生、君はどうだ?」
「残念ながら、ムーも読んだことがありません」
「僕もない」
 肩をすくめる壬生に、如月は苦笑を返す。
「あるものは仕方がないとはいえ……あまり縁を持ちたくはなかったものだよ」
「全くです。ああ、京也さんによろしく伝えてください」
「おいたはだめ、と?」
「はい。そのように。では、来週」
 符や丸薬の紙袋を軽く上げ、壬生は如月骨董品店を立ち去っていった。
 その姿を見送り、如月は居間に戻る。
 畳の上、文机の上に鎮座しましているパソコンと液晶のディスプレイ。立ち上げたままのそれのマウスを動かすと、ディスプレイに光が入り、デスクトップが表示された。
 メールが届いていることに気づき、中身を確かめる。
 内容に目を通し、如月は、深いため息をつき、眉間をもんだ。