黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~
微笑を浮かべ、壬生は互いの組織における利害の一致を示す言葉を口に出した。だが、正しい肯定の言葉は、最後まで語られることはなかった。
「――如月さん。あなたのためならば」
笑みを収め、壬生は、そう言った。
「そうそう。京也さんに、僕がプリクラを欲しがっていたとお伝えください」
不意に思い出したように、暇を告げてから壬生は言った。
「別に頼まなくてもくれると思うが、交換するものはあるのか?」
「いくらでも」
「……意外だな」
一瞬、如月は目を見開いた。
「別に、ナルシストのつもりはありませんよ。何か、誤解されたかもしれませんが」
「……」
如月の目つきに、壬生は柔らかな微笑を返した。
「多少の理由にはなるでしょう? こっそりと天香(がっこう)を抜け出す」
「まぁ、確かに」
壬生の説明に、如月は頷いた。とはいえ、未だ、疑わしげな表情を浮かべている。
敢えて訂正を加えることなく、黙って頭を下げると、壬生は如月骨董品店を立ち去った。
作品名:黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~ 作家名:東明