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黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~

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 ベッドによりかかったまま、京也は動きを止めていた。膝の上にひらきっぱなしの雑誌が乗っている。お世辞にもリラックスしきった格好とはいえないが、微かに聞こえる吐息は安定しているように思えた。
 皆守は目を細めた。口元のゆがみが苦笑にかわり、やがては柔らかな笑みとして落ち着く。
 湯を注ぐペースは一定のまま、眠る姿――おそらくは――を、見守った。
「ったく、人にいれさせておいて」
 取り上げたことを、心の棚のどこかにおいて、皆守は呟いた。その声は、けして不機嫌なものではない。むしろ、楽しそうで、どこかしら甘さを含んでいた。
 勝手に戸棚を漁ると、マグカップが一つだけ出てくる。その他には、ラーメン丼と数個の紙コップくらいしか見当たらない。
 少し形を歪にした紙コップと、心地よい厚みと重さのあるマグカップを見て、暫し考える。考えた後、マグカップを軽くすすぐと、できあがったコーヒーをいれ、口をつけた。
「おい」
 かけた声は、先ほどの独り言となんら変わらぬボリュームだった。
 京也は動かない。
 ゆっくりと、カップの中身を空にした。
 ポットには、後半量の黒い液体が残っている。
「――なぁ」
 口をひらきかけ、閉じた。そして、眉間を揉むと、首を横に振る。
 カップを流しにおくと、京也に近づいた。
 近づいても、ゆっくりと深い呼吸のペースは変わらない。
 手を伸ばしかけ、止めた。
 小さく舌打ちをすると、強引にベッドの上の掛け布団をひっぺがす。
 適当に眠っている相手にかけてやると、おおいそぎですばやく離れる。
 皆守は、半分残ったコーヒーのポットを手に取った。そして、そのまま部屋を出る。
 音が響かないよう、ゆっくりと扉を閉めた。
 扉を閉めてもなお、しばらくの間、動かなかった。
 位置を下げるポットの中で、液体が揺れる。
「なぁ」
 小さく口に出して言った。
 空いた手で、目元を覆う。口元が歪み、いびつな笑みを形作った。
「――なぁ」
 もう一度繰り返し、てのひらのかげできつく目を閉じる。
「ばかなやつ」
 呟くと、皆守は顔を上げた。そして、こぼさないように注意しながらも、大またで扉の前から離れる。
 気配と足音をおさえ、それでもできうるかぎり急いで、フロアを後にした。