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黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~

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「全然、変わってねぇな。アンタ、あの時、とにかくコトが終わるまでっつー調子で宥めてただろ。……まぁ、センセイが壊れなかったことだけは評価しておくが、だが……」
「僕の意見は変わらない。高熱の人間に、鍛錬だと寒中水泳をさせるような真似をする気はない」
 きっぱりと言い切り、如月は村雨を見返した。いっぺんの迷いもないその姿に、村雨は片手で顔を覆った。
「人間、頭もあれば足もある。考えて、乗り越えるなんざ基本技能だ」
「僕は去年の秋口の電話を忘れない。あの時の戸惑う声を、けして忘れない。事件が終わった頃の抜け殻みたいな表情も。最中の必死な笑顔も」
 らしくなく激昂の気配を見せていた如月は、大きく息を吸い、吐いた。言葉を切り、目を伏せる。すぐに顔を上げた。
「意見が合う気配はないな」
 口調はもとに戻っていた。冷徹な飛水の棟梁の面(おもて)が、秋月の守護者の一人に向けられる。
「全くだ。――とりあえず、今日の宿は世話になるぜ」
 口元を歪めるような笑みを浮かべ、村雨は言った。
「客間に布団だけは出してある。適当に使え」
「ああ。……っと。一つだけ意見があってるな」
 客間の障子をあけようとして、村雨は動きを止めた。きびすを返しかけていた如月も、その声に動きを止める。
「――あのセンセイを殺させやしない。なるべくなら、傷つけることも」
 如月は目を細めた。そして、薄い唇が、きれいな弧を描く。
「全くだ。――頼りにしているぞ、村雨」
 黙って頷き、村雨は客間に入る。障子がしめられてから、如月はきびすを返した。