黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~
部屋のはすむかいから、京一がかけた言葉に、如月は盛大に苦虫を噛み潰した。
「必要ない。で、むくか?」
そろそろと、障子の隙間から、劉が部屋に戻ってくる。織部姉妹ににこにこと手を振ってから、さりげなくテーブルにまぎれこんだ。
「サイズがあわないんじゃないかなぁ」
「そういう問題じゃないよ」
おっとりと舞子が言った言葉に、コップに残っていたビールを飲み干した藤咲がツッコミを入れる。そして、ゆったりとした動作で立ち上がった。
「で、どうするの、今から」
楽しそうに、彼女は壬生のそばにひざをついた。そして、見上げてくる壬生に、指先でキスを投げる。
「まずはまぁ、天香学園? の制服からか?」
にんまりと笑いながら、京一が立ち上がる。
「……蓬莱寺、藤咲さん……」
絶望をまぶした声が、細く響いた。どんな強大な敵を相手にしている時にも、彼から聞くことのなかった、とても情けない声だった。
肩をすくめ、二人に場所を譲ると、村雨はもとの場所に帰った。
帰った先では、京也がポケットからデジタルカメラをひっぱりだしていた。
「あっさり効きましたねぇ」
「ま、アンタをとっ捕まえるよりは、難事業だったかな」
「はえ?」
言った瞬間、村雨は、未だ寝転んだままの京也の背中にひじをおき、体重をかけた。
情けない声を上げ、目を見開く。おとなしく京也は、村雨を見上げた。
「あのう。村雨さん、ビール飲んでたからそうでもないと思ってたんですけど。もしかして、酔ってます?」
「さぁな。おい、神速の剣士に、姉サン。こっちもとっ捕まえたぜ。おあつらえ向きに、カメラまで持っていやがる」
言うなり、素早い動作でデジカメを取り上げると、傍らの小蒔に渡す。渡された方は、一瞬おどろいた表情をしたものの、カメラを構え、笑った。
「うあ、村雨さん、鬼。悪魔ー」
じたばたと暴れるものの、すぐに体勢ははがいじめに移行した。
二名のモデルによる、写真撮影会はつつがなく開催された。二十四歳の制服姿以外に、どんな写真が撮られたかは定かではない。
作品名:黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~ 作家名:東明