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すぐに終わりが来る事なんて、ちゃんとわかっていたのに

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ヴォルコフ修道院、表では優秀なブレーダーを養成する施設として名を馳せているが、その実態は日本の大企業・火渡エンタープライズの軍事部門のための違法実験機関であり同時に世界征服を目論むオーナーの為の私兵を養成する場所でもある。
 厳しい訓練に耐え抜いた者の中から、ブレーダーとして、そして何より兵士としての適正が認められた子供を選び出して英才教育を施し、正規軍人にも劣らぬ能力を持つほどの戦闘兵器に造り替えるのだ。

 暗闇の中、空気を切り裂く音がしたかと思うと、何かが倒れる音だけが響いた。
  ドサッ
 「どこだ!?どこにいる!?」
 狼狽した声と共に、微かな気配を追ってサイレンサー付きのマシンガンが火を噴く。
 「…遅い」
 耳元でそう囁かれた次の瞬間、背後から急所に一撃を喰らって昏倒する。
 「そこか!」
 別の場所から倒れる音を頼りに再び発砲されたが、その銃弾はむなしく空を切り対戦相手を全く捉えることが出来ず、不安に怯える訓練生は微かな光に反射する瞳を見た。
  ドサドサッ
 2つの物体が続けて倒れる音を最後に、その空間は静寂に支配される。十数秒の間を置いてピーっと機械音が響いて照明が点灯した。
 「訓練終了。勝者、タカオ・ドラグノーヴァ」
 5人の訓練生が倒れる中で、夜空色の長い髪をポニーテールに結んだ小柄な少女が冷たい目で訓練施設をモニターするカメラを見上げる。
 「最近の訓練生は、手ごたえがなさ過ぎてつまらない。もっと強い相手はいないのですか?」
 「君の技量が際立っていることの証だよ、タカオ」
 「ヴォルコフ様…」
 無線に入ってきた男性の声に、タカオはわずかに表情を緩めた。
 「特殊工作員候補生、タカオ・ドラグノーヴァ。君に対して、ついに実戦投入の指令が降りた」
 ヴォルコフのその言葉に、タカオは姿勢と表情を正す。
 「詳細は後ほど通達する。今は身体を休めたまえ」
 「了解しました」

 「タカオ…明後日、日本に発つって聞いたけど大丈夫か?」
 「大丈夫だって、ユーリ。ついにボーグが動き出す、その尖兵を務められるんだぜ?こんなに名誉なことは他にないよ」
 「そうだな。タカオになら、安心して任せられる」
 気負うことなく笑顔を見せるタカオに、ユーリも小さく笑う。
 「世界大会Bブロック、トーナメント頑張ってな?もっとも、ユーリの出番は無いかも知れないけど」
 「それはそれでつまらないけど…ボリス達がいるから、こっちに問題はない」
 寂しい時や、離れる前はいつも2人で一緒に寝ることにしていた。布団にもぐって手を繋ぐと、安心感が膨らんでゆっくり眠ることが出来る。
 「おやすみ、ユーリ」
 「おやすみ、タカオ」
 電気を消して、2人は目を閉じた。

 「あー、畜生…このまま行くと、タカオに続いて俺らも実戦投入だぜ。戦争の道具になんてなりたくねーっつーの」
  シュッ
 投げられたナイフが、壁に掛けられたダーツボード状の標的に突き刺さった。
 「そうだな…なりたくて私兵になったわけじゃないからな」
 セルゲイの同意の言葉を聞きながら、ボリスはさらにもう一本ナイフを投げる。
 「でも、回避する方法なんてあんのかよ」
 「んなもん、脱走しかないに決まってんだろー。あのおっさんの言うことなんて、好きで従ってるんじゃねーよ」
 ボーグ内では「極めて無口な奴」で通っているボリスだが、その理由はひどく単純だ。口を開けばヴォルコフへの文句しか出てこないので、普段は黙っているのである。
 「ユーリさえ何とか出来れば、こんなトコとっととオサラバしてるぜ」
 「お前ほんとにユーリのことしか考えてないのな」
 その広い凸の中身はどうなってんだ。とイワンが言葉を続けると、ボリスの投げたナイフが派手に標的を逸れた。
 「デコっていうのやめろっつってんだろ!?」
 「けっけー、デーコ、ハーゲ」
 「…消灯時間はとっくに過ぎてるんだぞ、見つかったらどうする気だ」
 口喧嘩が始まる直前でセルゲイの静止が入り、ボリスとイワンはしぶしぶ黙る。
 「ま、タカオの監視対象ってのは…多分アイツだろうけどな」
 2人に聞こえないように小さく呟いて、最後のナイフを標的に投げれば、それは見事中心に突き刺さった。