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すぐに終わりが来る事なんて、ちゃんとわかっていたのに

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 兵士と言うより、暗殺専用の殺人マシーンとして扱われてきた。ボーグを探ってきた人間に瀕死の重症を負わせた事だって一度や二度ではないのに、最後の一線を越えられないのなら意味がない。人を殺せない殺人機械に、どんな価値があるだろう。
 まるで爪も牙も役に立たない仔猫になってしまったようだ。感情なんて、実験で取り除かれてしまえばよかったのに。
 「…タカオ?」
 いつの間にか、カイが目を開けてこちらを見ていた。伸ばされた手が頬に触れて初めて、自分が泣いていたことに気付く。
 「なにかあったのか?」
 「…なんでもない。なんでもないよ……」
 涙腺があることさえ、忘れてしまっていた。それなのに、涙はどんどん溢れてきて止まらない。
 「みぅ…」
 小さく、仔猫のような鳴き声が喉からこぼれ、カイに抱き寄せられて頭を撫でられた。自分より少し大きいだけの、まだ幼さを残す手が、ゆっくりと小さな動物を扱うかのように触れてくる。
 暖かい腕の中で、心の奥の冷え固まったなにかが溶けて行くような気がした。この人とずっと一緒に居たい、そう願ってしまった。

 ―すぐに終わりが来ることなんて、ちゃんと分かっていたのに