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【腐向け】西+ちびロマSS・4本セット

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南仏のラベンダー


「これ、どうしたんだ?」
夕方の部屋に香る、柔らかな花の香り。
朝には無かったラベンダーの花束が、スペインの部屋に飾られている。
「ああ、フランスにもろてん」
「げ……ふーん」
思わずフランスの顔を思い浮かべて眉をひそめてしまうが、花に罪は無い。
花瓶に近寄りラベンダーの香りを嗅いでいると、ロマーノは昔を思い出した。

昔、昔の時代。まだ弟と、ローマ帝国といた時代。
あの頃の風呂に入っていたのが、ラベンダーだった。
昔の優しい思い出が次々と浮かび、知らずロマーノは顔を下げる。
(じいちゃん……ヴェネチアーノ……)

「何?どうしたん」
いつの間にか傍に来ていたスペインが、膝を折ってロマーノの顔を覗き込む。
「な、何でもねぇよ、コノヤロー!」
「ええ〜、何?何なん?」
驚いたロマーノが否定しても、しつこくスペインは聞いてきた。
「うう……別に、ただ、昔じいちゃん達とラベンダー入れた風呂に入ったなって思い出しただけだ!」
家族と離れて寂しがってるとか子供扱いされるのが嫌で、ロマーノはそう答えるとスペインの部屋を逃げ出す。
逃げ込んだ自分の部屋で、ロマーノは鼻に残ったラベンダーの香りを悲しく感じていた。
(思い出したって仕方ねぇのに……)

「ロマー、一緒にお風呂入ろ〜」
日が沈んだロマーノの部屋に、スペインが迎えに来る。
まだ上手く髪が洗えないロマーノの為に、スペインはなるべく一緒に風呂に入っていた。
「もう一人で出来るぞ、チクショーめ!」
「あかんよ、前にロマーノ湯船で溺れそうになったやん」
「あっ、あれは、……たまたまだ!」
「はいはい」
言い訳を続けるロマーノを軽く抱き上げ、風呂場へ歩く。
脱衣所で服を脱いだロマーノが風呂場に入ると、覚えのある香りがした。
「……ラベンダー……」
湯船に浮かぶ紫の花が、風呂場中に香りを充満させている。
驚いて立ち止まるロマーノに、後ろからスペインが笑顔で答えた。
「せやでー」
……そんなに貰ったのだろうか?
大量のラベンダーが浮かぶ湯船は壮観だが、部屋に飾った花束と合わせれば随分な量だ。両手に花束を抱えて訪れたフランスの姿を想像し、ロマーノは少し笑った。
湯船のラベンダーを軽く揉むと、さらに良い香りが広がる。
「気に入った?」
悪戯が成功したような顔で、スペインがロマーノの顔を窺う。
「……まあ、な」
言葉とは裏腹な笑顔を向けるロマーノに満足したスペインは、とろける様な笑顔で応えた。

懐かしい香りの風呂にはしゃいでしまったロマーノは、軽く湯あたりを起こしてしまう。
「ロマはしゃあないな〜」
湯あたりしたロマーノをしっかりと抱き上げて自分の部屋に戻ってきたスペインは、ベッドにロマーノを寝かすと、濡れタオルを取りに出て行った。
「うう……」
少し頭がぼうっとする。水が飲みたいかも……そう思うと、ロマーノは近くに水差しが無いか首を動かした。
「……あ」
動かした視線の先にある花瓶。夕方あった筈のラベンダーが無くなっている。
何処にいったのかは、さすがに分かった。
(スペインのバカヤローが……)
どこまでも甘い男だ。そう馬鹿にしながらも、ロマーノは胸に広がる想いを感じていた。

スペインの布団を頭まで被る。自身から香るラベンダーの香りとスペインの香り。
二つの香りを感じながら、ロマーノはゆっくり瞼を閉じた。


END