二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【腐向け】西+ちびロマSS・4本セット

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

暗闇のキャッツアイ


 ロマーノの不器用さはいっそ清々しい程で、掃除の筈がさらに汚れてしまった部屋を見るのはもはや日課に近い。一応叱っては見るものの一向に変化のない姿に、スペインはどうしたものかと思案していた。

 今夜は一緒のベッドで寝ようとスペインが用意していると、窓の外を見ていたロマーノが声を上げる。
「ヴォア!?」
「どっ、どしたん!?」
 飛び上がって驚き、勢い良く抱きついてきたロマーノを慌てて受け止めたが、既に涙目なその顔に一体何を見たのかとスペインも窓の外を注意深く窺う。だが外に広がるのは闇ばかりで、物音も聞こえない。
「『オモ・ネロ』だ!」
 スペインにぎゅっと抱きついたままのロマーノが、そう叫んだ。
「おもねろ?」
 その名には聞き覚えがある。数日前にロマーノに読み聞かせていたイタリアの絵本に、そんなセリフがあった。確か夜更かしする子供に母親が怒るシーン。
(「早く寝ないとオモ・ネロがやってくるわよ!」……やったかな?)
 オモ・ネロとは、イタリアの昔話に出て来る黒衣の男。人食いの化物で、南イタリアではよく躾に使われているらしい。
 ロマーノが震えながら指さす先を良く見ると、光る目が二つ。
「俺がちゃんと掃除出来ないから、来たんだ!!」
 そう言いながら泣きじゃくるロマーノを抱きしめあやしつつ、スペインは笑うのを堪えていた。
(……あれ、猫やんなぁ……)
 読み聞かせた絵本のせいか、ロマーノは光る猫の目を『オモ・ネロ』がこちらを窺う目と勘違いしているらしい。悪い子を食べる化物に怯える姿に、いつもは憎たらしい程子供らしくない態度を見せるくせにと苦笑する。
「ヴォアアアア!! 助けろ、スペイン!」
 ふと動いた猫の目に、ロマーノが更に怯える。ボロボロと涙をこぼす姿は可哀そうだけれど、少し利用させて貰おうとスペインは企んだ。
「大丈夫やで、ロマ。親分がちゃーんと守るからな!」
「……おう」
 笑顔でそう言えば、ロマーノが泣きながらもそう頷く。いつになく素直なその姿に、思わず愛しさがこみ上がる。泣き続けるロマーノをしっかり抱きしめて背中を撫でながら、真面目な声で語りかけた。
「でもな、またアイツが来んように、ロマはちゃーんと仕事せなアカンよ?」
 親分が居ない時に来たらどうすんねんと言えば、腕の中の子供の背中が跳ねる。暫くぷるぷると震えていたが、やがて小さな涙声で「おう」と返事が返って来た。その返答に満足すると慰めるように頬へキスをし、抱きしめたままベッドに入る。
 ベッドの中でも離れないようしっかりと自分の服を握るロマーノの姿に、親分として頼られている満足感がスペインの胸を支配した。
(明日は猫にお礼せんとな……)
 口元の笑みを隠せないまま瞼を閉じる。腕の中の体温を喜びながら、スペインは明日猫に御飯でもあげようと予定を入れた。

「ちぎ……っ」
「……うん、前よりは良くなってるで」
 涙目で精一杯掃除したらしい部屋に立ち竦むロマーノに、一応フォローを入れる。真夜中の恐怖はロマーノの掃除の腕をほんの少しだけ上達させる程度にしかならなかったが、それ以来一緒に寝る事が増え、結果的にはスペインをとても満足させたのだった。


END