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着ぐるみの着心地はいかが?ロイエド編 前編

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「ロイ!! 頼む一生のお願いだ!!」

「断る。」


今日も今日とて蒸し暑い。
そんな中、さらに教室の温度を何度か上げてるんじゃないだろうかという暑苦しい男が、
一見クールな男に土下座をしている。

「ハボック、諦めろ。」

「お願いだよぉ、デートの返事OK貰うの3ヶ月ぶりだぜ?」

「知らん。」

そろそろこのやり取りを始めて10分が経過しようとしていた。
さすがのハボックも下手に出たところで無駄だと思い、思い切って己の最大の武器を手に取った。


「お前の長く切ない片思い秘話、エドにバラすぞ。」

「!!!!」

どうやら随分と効果があったらしく、ロイはダメージをくらっている。
よし、もう一押し。


「おっちょうどいいエドー」

「なっ!!!!」

「嘘v」

こんな焦った顔も珍しい。
思わずハボックの顔がゆるむ。

「貴様…」

「エドにバラされたくなかったら――


「俺がどうかしたか?」

「「エドッッッ!!!?」」

「ん?何だよ?」


まさかの本人登場。


「ロイ、一緒に飯食おうぜ。」

「あっあぁ。」

「ところで何の話してたんだ?」

「「・・・・・」」


二人は思わず、沈黙してしまった。
ハボックにとっては唯一ロイを黙らせる武器。
そう簡単には手放せない。
ロイにとっては知られたくない過去。

「なぁってば、」

「あっそう!!そうだよ!! 聞いてくれよエド!!」

「おいハボック!!」

「(大丈夫だって)」

信用できずハボックをにらみ続けるロイに向かってハボックはにんまりと笑う。
ロイはただただ嫌な予感しかしなかった。


「日曜日なんだけど、俺バイトに出れなくなっちまってよ…ロイに代わってくれって頼んでたんだ。」

「…何度も断ってるだろうが。」

「そっか、日曜日俺と約束あるもんな。でもいいぜ?代わってやれよ。」

「なっ!!」

「おっ!!エドー良い事言うじゃねぇか。」


最愛の恋人であり、見方だと思っていた人物にまさかの裏切りをくらい、大ダメージをくらった。
ロイは二人に見つめられるかたちになった。
だからといって代わってやるのは御免だ!!

「…断――

「なぁ何のバイトなんだ?」

「ん?あぁよく聞けよ、夢を売る仕事だ!!」

「まじか!!」


『断る』というたった一言も言わせない絶妙なタイミングでエドが割り込んだ。
わざとだとしたら恐ろしい。
そうして質問して返ってきた言葉にエドのテンションは一気に上がる。
もっと恐ろしいことになってきた。
エドは祭り、遊園地、そういった夢あるものが何より大好きなのだ。
それを知った上でそういう言いまわしたハボックは意外と策略家だ。

エドは瞳をキラキラと輝かせながらロイを見つめだした。
ロイはそんな姿が可愛いと思いつつ、打開法を考えていた。

がしかし、


「エドもやるか?」


この一言で何もかも決まった。






『着ぐるみの着心地はいかが?
   ロイエド編 前編』